いわゆるリーマンショックによる2008年〜2009年の世界的な景気後退以来、半導体産業は、口径が200mm以下のシリコンウェハの使用をやめて、より大きな300mmウェハを採用して費用対効果の高いデバイス製造を行うように努めてきた。また、合併や買収、20nm以下のプロセス技術を用いた先端デバイスの製造への移行といった動きも、サプライヤが非効率なレガシーな半導体前工程工場(ファブ)を閉鎖したり、売却したりする一因となっている。米IC Insights発行のレポート「Global Wafer Capacity 2018-2022」によると、2009年から2017年までに、世界中の半導体メーカーは、92のウェハファブを閉鎖(別途再利用または売却を含む)しているという。

最近の大きな動きとしては、2013年にDRAMメーカーの台湾ProMOSが2つの300mmファブを閉鎖したほか、ルネサス エレクトロニクスも2014年に日本(鶴岡)の300mmファブを閉鎖しソニーに売却した。現在、ソニーはそのファブを再利用してイメージセンサを製造している。Samsungも2017年、韓国Yongin(龍仁)の300mメモリファブ(ライン11)を閉鎖した後、イメージセンサへとライン変更を行った。

日本の半導体サプライヤは、2009年以降、他のどの国/地域よりも多い34の半導体ファブを閉鎖している。2009年〜2017年の期間に、北米では30ファブが閉鎖され、欧州では17ファブが閉鎖された。日本を除くアジア太平洋地域では閉鎖されたファブは11のみである。SEMIによると、300mmファブを世界一多く持っているのは韓国、200mmファブ最多保有国は台湾(以前は日本だった)、150mm以下のファブは日本が一番多く保有しているから、世界で一番ファブ閉鎖が多いのも日本であることは当然であろう。

  • 2009~2017年に閉鎖された半導体前工程ファブの地域別内訳

    図1 2009~2017年に閉鎖された半導体前工程ファブの地域別内訳 (出所:IC Insights)

閉鎖ファブ数をウェハ口径別に集計すると、41%が150mmであり、26%が200mm。300mmの閉鎖も10%を占める状況となっている。2009年以降はじめて閉鎖された300mmファブは、独Quimondaのものだったが、これは同社が倒産したためである。

  • 2009~2017年に閉鎖された半導体前工程ファブのウェハ口径別内訳

    図2 2009~2017年に閉鎖された半導体前工程ファブのウェハ口径別内訳 (出所:IC Insights)

リーマンショックによる世界的な不況により、2009年および2010年にファブ閉鎖が急増。2009年には25のファブが、2010年には22のファブがそれぞれ閉鎖された。また、2012年および2013年には、それぞれ10のファブが閉鎖されている。この間、もっともファブ閉鎖が少なかったのは2015年で、2ファブの閉鎖だけで、2017年も3ファブのみと少なかった。IC Insightsでは2018年と2019年に閉鎖の対象となっている3ファブ(2つの150mmファブ、1つの200mmファブ)をすでに特定しているという。

なお、最近、半導体業界で合併・買収活動が活発化しており、かつ新しいウェハ・ファブ建設費や製造装置コストが高騰しているため、今まで以上に半導体企業のファブライトやファブレス・ビジネス・モデルへの移行が進むことが予測される。そのため、IC Insightsでも今後数年間に多くのファブが閉鎖されるのではないかと予測しており、こうした流れが進めば、代わりに製造を請け負うファウンドリ業界にとっては喜ばしい結果となることが見込まれる。