高エネルギー加速器研究機構(KEK)は2月26日、金属酸化物の化学状態が不均一に変化する現象を放射光X線顕微法で観察し、応用数学の手法の1つパーシステントホモロジーを活用してその反応起点を特定するという研究手法を開発したと発表した。

  • 今回の研究アプローチと従来との比較の模式図 (出所:東北大学Webサイト)

同成果は、KEK物質構造科学研究所の木村正雄 教授、武市泰男 助教らと、東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の大林一平 助教、平岡裕章 教授、新日鐵住金先端技術研究所の村尾玲子 主任研究員らの共同研究グループによるもの。詳細は英国の学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

材料の不均一性は、作りたての材料の特性を決めるだけでなく、実環境で使用する際の寿命や信頼性を左右することが多い。

従来の材料研究では、先人が構築してきた研究理論や自らの経験と知識を総動員して、顕微法で観察された不均一性の原因を細かく調べてきた。そのため思いつくメカニズムが従来の知見の想定範囲内にとどまる傾向があった。

そこで、膨大なデータを最大限活用して、全く新たな視点で材料欠陥のメカニズ ムを解明すべく、同グループは研究に取り組んだ。

観察された不均一さの発生原因を細かく調べる従来の研究アプローチに対して、今回の手法では、不均一さの「かたち」そのものがさまざまな反応メカニズムを内包していることに注目し、ミクロな見た目の「かたち」のみをもとに材料の欠陥を見いだす。

さらに、対象物に関する科学的な知見や経験則などは不要で、先端計測手法により得られる膨大なデータから、材料のマクロ特性を支配する因子を簡単に見つけることができる。 なお、今回の成果を受けて研究グループは、今回の実例に限らずさまざまな反応や分野に展開可能で、今後、機械学習や人工知能を用いた材料開発に不可欠なアプローチ法の1つになると期待されるとコメントしている。