HomePodにA8プロセッサを搭載したことは、HomePod自体が今後、昨今のAppleらしい製品進化を遂げていく「ライン」にあることを意味している。Appleは製品の独自の進化と付加価値、価格とパフォーマンスにおける競争力を、自社開発のチップによって作り出す成長戦略を採っているからだ。

iPhoneやiPad、Apple TVといったアプリを動作させるデバイスに対しては、Aシリーズのプロセッサが採用され、処理性能、グラフィックス性能、省電力性に加え、最近では機械学習や拡張現実といった、アプリ面でフォーカスしたい分野に対しても、チップの最適化を進めている。

Apple Watchは、Sシリーズにくわえ、AirPodsに採用したWシリーズのプロセッサも採用し、Appleの独自チップ戦略の最も大きなメリットを享受する製品となっている。また、Intelチップを採用するMacに対してもTシリーズの自社開発チップを搭載し、新しいインターフェイスやセキュリティ強化の役割を補っている。

こうした中で、HomePodがAシリーズのプロセッサを採用したことは、HomePod自体が進化する可能性を示唆し、汎用的な処理を実現する可能性をも裏付ける。将来、どんな機能や役割を持たせることになるのか、楽しみなところではある。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura