2020年の東京五輪に合わせて、次世代のモバイル通信規格「5G」の商用サービス提供に向けた準備を進めているNTTドコモ。同社の代表取締役社長である吉澤和弘氏は来る5G時代の到来に向け、中期経営計画「beyond宣言」の下、どのような戦略をもって取り組もうとしているのだろうか。スペイン・バルセロナで開催されている「Mobile World Congress 2018」で話を聞いた。

5G時代にはパートナーとの協業が重要に

スペイン・バルセロナで2月26日より開催されている携帯電話の総合見本市イベント「Mobile World Congress 2018」。その初日の基調講演に登壇したのが、NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏だ。

  • NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏

現在NTTドコモは、次世代の通信規格「5G」の商用サービスを、2020年に展開するべく準備を進めている。そうしたことからスペイン・バルセロナで2月26日から実施されている携帯電話の総合見本市イベント「Mobile World Congress 2018」に、NTTドコモはNTTグループと共同で従来より一層大きなブースを展開。5G時代に向けた技術やサービスのアピールを積極化してきている。

そして吉澤氏は基調講演において、5G時代には、4Gの時代までのように通信事業者が単独でサービスを提供するのではなく、同社が掲げる中期計画「beyond宣言」に基づき、企業や自治体などさまざまなパートナーと協業しながらチャレンジを進めることだと話している。

実際基調講演の中で、吉澤氏はコマツとの協業による、5Gのネットワークで建設機械を遠隔操作する実証実験や、和歌山県・和歌山県立医科大学との協業による、4Kビデオ会議システムを用いたリアルタイム遠隔医療の実証実験事例などを紹介。多くの企業と5Gを活用したサービス創出に向けて取り組んでいることをアピールしていた。

  • 「Mobile World Congress 2018」の基調講演は、NTTドコモの中期経営戦略「beyond宣言」と、それに基づいたパートナーとの5Gに関する協業に関する説明が中心となっていた

そうしたパートナーとのコラボレーションを重視したNTTドコモの姿勢は、同社がMobile World Congressで実施していた展示の様子からも見て取ることができる。NTTドコモはこれまで毎年、同イベントで展示を実施してきたが、今年は先にも触れた通り、NTTドコモだけでなく、NTTグループと共同で出展し、5Gの進展に向けてNTTグループ全体で積極的に取り組む様子をアピールしていた。

同社がコラボレーションを重視する背景には、5Gの時代に向け通信事業の環境が大きく変化していることが挙げられるようだ。実際吉澤氏は「ここにきてAIやIoT、そしてサービスの革新などが起きてきている。そうした時代には5Gを単独で手掛けるより、グループ内で連携をとることによって初めて見えてくるビジネスがある」と話しており、NTTグループが持つ技術やリソースを組み合わせることで、5Gの可能性をアピールしたい考えがあるようだ。

  • 同じく「Mobile World Congress 2018」のNTTドコモブース。NTTグループと共同での出展となって規模が大きくなり、盛況な様子を見せていた