2018年2月19日、東京メトロ深川工場のメディアツアーが行われた。そこで取材してきた話を基に、地下鉄車両の検修現場において「安全」や「業務効率化」などの課題をどのような形で解決しているかについて、紹介しよう。

  • 深川工場の正門に掲げられた看板

深川工場でやっていること

深川工場は東京都の江東区、東京メトロ東西線の東陽町駅から徒歩10分ほど南下した場所にある。ここに「深川検車区」と「深川工場」があり、それぞれ異なるレベルで車両の検修業務を実施している。

深川検車区は、営業運転を終えた車両の留置や清掃、そして列車検査、月検査、車両の入出庫を担当している。留置可能な車両は300両(30編成)だが、東西線には510両(51編成)の車両があり、深川だけでは収容できないため、妙典にも車両基地が設けられている。

列車検査は10日を超えない範囲で実施するもので、消耗品や電車の主要部分を対象として検査を実施する。状況によっては、消耗品の交換を行う場合もある。

月検査は3カ月を超えない範囲で実施するもので、電車の状態や機能に関する検査や消耗品の交換を実施する。列車検査と似たような検査に見えるが、外から見て確認するか、機能の動作確認を行うか、という違いがある。

どちらにしても、検車区で行う検査は在姿状態、つまり分解を伴わない、そのままの状態で実施する。作業内容は大がかりではないが、回数は多いし、深夜の入庫に対処したり早朝の出庫に間に合わせたりするための夜間勤務もある。

これに対し、深川工場は重要部検査と全般検査を担当している。重要部検査は4年を超えない範囲、あるいは走行60万kmを超えない範囲で実施するもので、主電動機を初めとする動力関連機器、台車のような走行装置、ブレーキなどといった重要な装置について、入念な検査を実施する。

全般検査はさらに、車体や内装品まで対象を拡大して,車両全般を対象とする分解検査を実施する。深川工場の場合、10両編成・1編成にかける時間は27~28日とのこと。51編成の車両が8年以内に全般検査を受けるから、毎年、7編成は実施している計算になる。

工場で行う検査は機器の取り外しや分解を伴う検査である。全般検査の場合、入場した電車は1両ずつ切り離して、まず内装品を取り外す。続いて台車抜きを行い、抜かれた台車は専門の検修場に送られる。台車を抜かれた電車は動けなくなってしまうので、ウマに載せて、その状態で床下機器を取り外す。外された機器はそれぞれ専門の検修場に送られる。

車体や内装、あるいは取り外しを行わない機器は、ウマに載せられた状態で検修を行う。新幹線の全般検査みたいに、車体が工場の中を行ったり来たりすることはない。

  • 中央の線路で台車抜きを行い、車両はその両側でウマに載せられる。そこから機器を取り外して検修に回し、作業が終わったら元通りに取り付ける。

すべての検査工程を取材したわけではないが、取材した作業を「安全」「効率化」などの見地から眺めてみよう。