東北大学は、ニッケルイオンにより誘発される炎症細胞の活性化が、生理的濃度の亜鉛イオンにより抑制されることを明らかにしたと発表した。この発見は、低亜鉛血症患者はニッケルアレルギーが増悪化しやすいことを示唆しているということだ。

同研究は、東北大学大学院薬学研究科の平澤典保教授、加齢医学研究所の小笠原康悦教授らの研究グループによるもので、同研究成果は、2月13日に「Scientific Reports」に掲載された。

近年、金属イオン、特にニッケルに対するアレルギー反応をしめす金属アレルギーの患者が増加している。ニッケルを含有する医療機器を体内に設置する機会が増加したこともあり、ニッケルイオンによる炎症反応、アレルギー反応の誘発が問題となっているが、その抑制方法は確立されていない。また、ニッケルイオンは、炎症性細胞の細胞内に取り込まれ、様々な反応を誘導することが知られていたが、その細胞内取り込み機構についてもほとんど明らかにされていない。そこで同研究では、ニッケルイオンによる炎症性細胞の活性化機構について解析が行われた。

同研究グループは、ヒト単球系細胞株THP-1において、細胞内に取り込まれたニッケルイオン量を誘導結合プラズマ質量分析計により精密に測定し、インターロイキン-8の産生を指標として、炎症性細胞の活性化を評価した。その結果、細胞内ニッケル濃度の増加とともに、インターロイキン-8の産生が増加することが確認された。さらに、各種金属イオンの存在下でニッケルイオンを刺激したところ、低濃度の亜鉛イオンがニッケルイオンの取り込みとインターロイキン-8の産生をともに抑制することが見出された。さらに、マウス背部皮下にニッケル金属を埋入し、溶出したニッケルによる炎症反応を評価したところ、コントロールマウスに比べて、低亜鉛食を与えて低亜鉛状態にしたマウスにおいて強い反応が誘発されることが明らかになった。

これらの結果は、生理的濃度の亜鉛イオンがニッケルイオンによる炎症反応に抑制的に作用していることを示しており、この発見は、近年日本人に増大している低亜鉛血症患者に対し、ニッケルアレルギーが増悪化しやすいことを示唆し、注意を喚起するものとなるということだ。