メキシコの人気俳優ガエル・ガルシア・ベルナルが、型破りな天才指揮者を好演するAmazonスタジオ製作のオリジナルドラマ『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』、そのシーズン4の配信がAmazonプライム・ビデオで始まった。ニューヨーク交響楽団の舞台裏をスキャンダラスに描くシーズン独自のカラーはそのままに、今回は日本が初めてエピソードの舞台に。『HEROES/ヒーローズ』のマシ・オカのほか、加瀬亮、藤谷文子なども参戦したシーズン4について、来日撮影中のガエル・ガルシア・ベルナルを直撃! 数多くの視聴者をトリコにしているドラマの魅力について、演じる指揮者ロドリゴというキャラをベースに語ってくれた。

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――もともとの話なのですが、『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』のどこに魅力を感じて出演を決められたのでしょうか?

これはテレビで、テレビは昔と今では形態がまったく違うよね。端末で観る機会も増え、僕たちが観ていたテレビの時代ではなくなった。僕自身、5年ほど前にアマゾンからこの企画を聞いた時は、新しいコンセプトにわくわくした。ただ当時、アマゾンがなぜ? という事情を理解できていなかったよ。いまとなっては多数の配信やサービスをやっていることは皆が知るところになったけれど、僕には楽しい経験になるだろうという直感があった。クラシックの世界に身を置く指揮者の役でもあると知って、それは企画の詳細にかかわらず、楽しそうだという直感があった。実際、飛び込んでみたら、その通りになったよ。

――主人公のロドリゴは、天才的ですが、破天荒な言動をする人物ですよね。彼の人間性は、どう理解して演じているのですか?

天才ミュージシャンみたいな偶像って、ある種皆の頭の中にあると思うけれど、それを上手く使って、遊び心で演じているところはある。ひとつのことに秀でている人は、日常生活が欠けている場合もあるよね。自分の銀行の口座がわからないとか、人間関係がダメだとかね。マラドーナなどは、サッカー以外は不得手な方でもある。でも人間は皆そうなのだと、彼を通じて思うところではあるよね。

――最新のシーズン4でも、ロドリゴは相変わらずでしょうか?

シーズン4で興味深い点は人間関係だね。彼が経験したことがなかったようなご近所さんとか、確固たる人間関係に身を置いてみようとか彼は思うようになる。実は彼にはピザをオーダーすることさえアーティスティックな冒険であって、それを演じることは楽しいことでもある。ドッペルゲンガー的なというか、簡単に言うと夜になったら変身してみたい男、それがロドリゴというキャラクターさ。

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――ちょっとあこがれの眼差しで見てしまうところもあるということですね。

彼のように自由に生きたい、楽器を手に取って演奏してみたいとは思うよね。彼の中には、ここまでという限界もない。そういうことはいいね。自分がこうありたいと小説を読んでいて思うようなキャラクターで、俳優としてもそういうキャラクターを演じられる醍醐味があるよ。複数の側面を持っているキャラクターで、自由な時もあれば誰かが必要で落ちつこうと思っているようなところもある。いろいろなアップダウンもある。それがまたロドリゴが持っている二元的な側面でもあるわけだよね。

――同姓としては、どうでしょうか?

彼と僕は似ているところもあって、メキシコが本拠地ではあるけれども、世界中をよく旅していて、いろいろな言語で話をしたり仕事をしたりする。だから異端者みたいなところはロドリゴとかぶるところでもあって、僕が気に入っている彼の側面でもあるね。彼は、僕たち現代人よりも少し先を歩いていて、悟りのようなものが開けてもいる。そういうところは、楽しいキャラクターでもあるよね。それこそが物語の中でコメディーになっていくわけだから。

――ゴールデン・グローブ賞も受賞するなど、高い評価を得ていますよね。ご自身では、どこが評価されたと受け止めていますか?

僕がシリーズに感じている偉大な気持ちを、皆さんも抱いているからではないかな。メキシコでバイオリンを習っている子どもが、僕のところにやってきたことがあってね。彼のバイオリンはなかなか上手かったけれど、このドラマを観て指揮者志望になったそうだよ(笑)。ガエルができるなら僕もできると思ったのかも(笑)。シリアスなだけではなく、コメディー要素もあるので、皆が楽しみながら観ている。そして、インスピレーションも受ける。この作品の魅力って上げるときりがないけれど、そういうことじゃないかな。

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■プロフィール
ガエル・ガルシア・ベルナル
1978年11月30日生まれ。メキシコ、ハリスコ州グアダラハラ出身。俳優の両親を持ち、芸能一家で育ち、子役としてキャリアをスタート。2000年、演劇学校在学中に出演したメキシコ映画『アモーレス・ペロス』の演技が評価され、2001年公開『天国の口、終りの楽園。』のヒットで日本でも人気が爆発。ベネチア国際映画祭では、マルチェロ・マストロヤンニ賞(=新人俳優賞)に輝いた。2003年には『モーターサイクル・ダイアリーズ』で若き日のチェ・ゲバラを演じるなど俳優としてのキャリアを重ね、近年ではハリウッド映画にも進出。Amazon Prime Originalドラマシリーズ「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」では型破りな天才指揮者を好演中で、40代を前に新たな当たり役を得て注目を集めている。

撮影:金子怜史