未来館の常設展示には、3つの大きなテーマがあります。

「世界をさぐる」「地球とつながる」「未来をつくる」。

ここまでの常設展の連載記事は、「世界をさぐる」の観点から進めてきました。

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5階常設展の入り口「セカイゲート」です



その振り返りをしつつ、「未来をつくる」に向かっていきたいと思います。

「さぐる」は、「探求する」「解き明かす」「理解する」につながります。

いわば、「科学技術」のうちの「科学」です。



連載の最初に紹介した「ぼくとみんなとそしてきみ」は、「人間ってどんな生き物なんだろう?」という問いを、脳の働きやチンパンジーとの比較からさぐりました。その結果、「共感」や「言語」といった「他者とつながろうとする性質」が見えてきました。

http://blog.miraikan.jst.go.jp/other/20171030post-764.html

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「100億人でサバイバル」では、地球の活動から発生する地震や台風といった「ハザード」と、私たちがつくる「社会の環境」が複雑につながりあって、被害の内容に影響している世界観を得ました。

http://blog.miraikan.jst.go.jp/other/20171201100-2.html

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さらにジオ・ツールで地球の二酸化炭素濃度の変化を見て、二酸化炭素を出す人間と、吸収する植物が、地球の大気を通じてつながっていることをデータから感じました。

http://blog.miraikan.jst.go.jp/other/20180105post-776.html

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人間、社会、地球といったさまざまなスケールで世界をさぐり、見えてきたのは「つながり」です。

あらためて見てもらいたいのは、未来館のシンボル展示のGeo-Cosmos。

宇宙飛行士でもある館長の毛利衛の「宇宙から見た地球のイメージを、たくさんの方と共有したい」という思いが込められています。

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Geo-Cosmos



毛利は宇宙から地球を見て、「美しい」と感じるとともに、「地球全体がひとつの生命体のようだ」と思ったといいます。

二酸化炭素を出す動物と、吸収する植物。

光合成をする植物と、その植物を食べる動物と、動物が食べた後のフンや死骸を分解する微生物。

いろいろな役割を持った生き物たちがつながりあってバランスを取ることで、「地球全体」の営みが持続している──。それは、人間の身体に200種類とも言われる細胞がさまざまな機能を持ち、1つの生命体を形づくっているところに通ずる部分があるのかもしれません。

そして毛利はもう一つ、「はかない」とも感じたそうです。

たとえば、生身の人間が生命を維持できる大気があるのは、せいぜいエベレストの頂上(8848m)くらいまで。ちょっとおまけをして「地上10km」としても、直径6mのGeo-Cosmosのスケールではわずか5mm程度です。宇宙から見たら"膜"程度にしか見えないそのわずかな空間は、明らかに有限であり、とても壊れやすいのではないかというのです。

国際宇宙ステーションからのライブ映像です(by NASA)



「美しい」「生命体のようにつながっている」「はかない」

こうした世界観に、みなさんは、共感するでしょうか?

それとも、違った世界観を抱くでしょうか?



いろいろな展示や記事が、みなさんの世界観を膨らませるきっかけになれば嬉しいです。

そして、そんな世界観が、「未来をつくる」際のヒントになっていくのではないかと思います。




【エコロジーと、エコノミー】

蛇足になりますが、「エコロジー」と「エコノミー」という言葉があります。

「エコロジー」は「生態系」、「エコノミー」は「経済」と訳されることが多いでしょうか。

同じ「エコ」なのに共通点を見出すのが難しかったりします。

ただ、その「語源」を知ると、納得できる面白いものでした。

人づてに聞いたその話は、検索すると下記サイトにうまくまとめられていたので、そのまま紹介します。

ASCA Corporation「語源で超ゴキゲン」第8回:エコノミーとエコロジー(1)

http://www.asca-co.com/gogen/blog/2011/12/1.html



端的にまとめると、

・「エコ」の語源は「家」。

・「エコロジー」は「家」の「論理・学問」。

・「エコノミー」は「家」の「規則・規範」。



ここで、「家」を「地球」とすると、

「エコロジー」は、地球がどういう営みをしているのか理解すること

「エコノミー」は、地球をうまく運営していくためのルールや仕組みをつくること

と解釈できるように思います(筆者の解釈が入っています)。



すると、「エコロジー」が、人間を含む「生態系」の理解に向かうのは、分かる気がします。

これは、「世界をさぐる」というサイエンスの営みそのものです。

一方で「経済」は、いつの間にか「お金(貨幣)」の意味合いが強くなり、それ自体が目的化してしまっているけれど、もともとは地球をうまく運営していく手段のひとつだったのではないでしょうか。

本来の「エコノミー」を考えると、「未来をつくる」行為そのもの。

お金をだけでなく、テクノロジーなんかもうまく使いながら、時にはイノベーションを起こし、心地よい社会をつくっていくことだと思うのです。



「エコロジー」と「エコノミー」。

「サイエンス」と「テクノロジー」。

「世界をさぐる」と「未来をつくる」。

並べてみると、ちょっと似た関係に見えてくるし、どちらか片方ではなく両方を大事にしたいと思うのです。

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【関連書籍】

「宇宙から学ぶ──ユニバソロジのすすめ」毛利衛

http://amzn.asia/fHe9DGS





Author
執筆: 谷 明洋(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
地域を伝える新聞記者から、科学を伝える科学コミュニケーターへ。 旅先で垂直に昇るオリオンを見て、「丸い地球の、赤道近くにいるんだな」。ハモる和音の周波数を学び、「だからドミソって気持ちよいのか」。小さな港町のかつお節工場を訪ね、「職人技と発酵のコラボが生み出した日本の宝だ」。いちいち感動します。 幅広い好奇心と「伝える」経験でこの先、ひとりの人として何ができるのか。 人に会い、場を訪ねながら、探求しています。