Apple Musicは、もともとの入口のハードルの低さに加えて、会員増加の起爆剤の存在もある。それは2月9日に発売されたホームスピーカー「HomePod」だ。

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本連載でもたびたび指摘してきた通り、HomePodは「Amazon Echo」や「Google Home」のように、人工知能アシスタントが利用できるスマートスピーカー、という施策を打ってこなかった。より、新しいオーディオ製品としての側面を強調しており、Siriは音楽体験を声で実現する、HomePodを構成する1つの要素として紹介されている。

もちろんHomeKitでアレンジされたスマートホーム製品をコントロールすることができるし、電話をかけたりメッセージを送ったりといったアシスタントの機能も動作してくれるのではあるが。

HomePodはiPhoneやiPadなどの「ホーム」アプリから設定し、Apple Musicの再生に利用できる製品だ。詳細は後日ご紹介するが、HomePodを利用するならApple Musicが必要だし、Apple Musicをスマホなしで利用する最良の方法がHomePodという図式になっている。

HomePodのマーケティングの難しさは存在する。Appleはそう見られたくないはずだが、スマートスピーカーの競合としてとらえられれば、どうしても349ドルという価格の高さが際立つ。またオーディオ製品を強調しすぎれば、音にこだわるユーザーをターゲットにしにくい。多くの場合、彼らは既にオーディオセットを持っているからだ。

そこでApple Musicの存在が重要となる。Apple Musicをシンプルに、良い音で再生できるオーディオ機器、という位置づけはユニークであり、HomePodの存在価値を高めてくれることになるだろう。

9to5macが伝えたKantarの調査によると、Apple Music加入者は非加入者と比較し、HomePodの購入意向が9倍となっているという。その一方で、Apple Music利用者の約13%が既に音声アシスタントスピーカーを所有しており、HomePodの発売が遅れたことで、他のデバイスを選んだユーザーが存在していることも明らかとなった。

これから予想される展開としては、クリスマス期間の値引きをきっかけにAmazonやGoogleの製品を購入したユーザーのHomePodへの乗換えだ。品質や評判によっては、それらの購買者が買い換えるという可能性は大いにありうることだ。