▼大きなテーマは「鳥」

――先ほど物語というお話がありましたが、今回のアルバムは「おはよう」で始まり、「おやすみ」で終わる構成になっていますよね。

はい。1日をテーマにしております。

――そういった構成からも物語を感じますが、改めてアルバムのコンセプトについておうかがいできればと思います。

1日がテーマでもあるのですが、それ以上に意識したのが「鳥」です。今回は私が好きなものを詰めこもうと思っていたので、大好きな「鳥」をテーマに多くの楽曲を製作していきました。

――確かに、例えば「A Crow」はタイトルから鳥要素が入っていますね。

タイトルや歌詞のなかに「鳥」の要素が入っている曲もあれば、実は「鳥」というワードが直接的に入っていなくても歌詞やメロディーは「鳥」を意識したものになっているものもあります。

――それはご自身が作詞されていない曲でも?

そうですね。例えば「トロピカルガール」はCMJKさんに作詞していただいた曲ですが、これは「オニオオハシ」という鳥をイメージして作詞・作曲していただいています。

――そうだったんですね!

はい。直接的に「オニオオハシ」という言葉は出てきませんが、「アマゾンの空飛ぶ宝石」というのは「オニオオハシ」のことを指しています。あとは果物色の鳥なので、フルーツの名前を羅列していますね。楽曲はとても盛り上がれる曲でまさに「オニオオハシ」らしいTheトロピカルという感じに仕上がっています(笑)。

――『1000ちゃん』で演じられているミリオの曲のように盛り上がれそうな楽曲ですね。

確かに、そうかも!

――「トロピカルガール」以外の楽曲にはどのような「鳥」要素が入っているのでしょうか?

自分が作詞を担当した「おはようの合図」と『Fly High Myway!』に関しては自分が青い鳥であること、そして鳥かごの中で飼われている鳥をイメージしています。「やっぱり外の世界に憧れているのかな」「ぼーっと外を眺めているときは空を飛んでいるハトやカラスを見ているのかな」など、鳥かごの中いる鳥はどういうことを思っているのか、ということを想像して書きました。

――なるほど。

『Fly High Myway!』に関してはMVでも鳥かごの中に入って映像を撮っているので、ぜひそちらも見ていただければと思います。

――先ほどの2曲に対して、「A Crow」や「Migratory」はタイトルから「カラス」「渡り鳥」という意味のある曲ですね。

はい。「A Crow」はタイトルにも、歌詞にも「カラス」というワードを使っています。ダークな世界観のロック調の楽曲ですね。「Migratory」もタイトル通り、「渡り鳥」をイメージして製作しました。「渡り鳥」は特別好きで大陸を渡っている訳ではなく、習性でそういう行動を取っていると思うんです。でもその「渡る」行為には強い思いがあるのでは、と感じるんですよね。

――歌詞の中にも「使命」といった強い言葉が使われています。

これはアイラさんが作ってくださった詞なんですけど、先ほどのような「渡り鳥」のお話を事前にさせていただきました。アルバムに収録されている楽曲の多くは、私の「鳥」のイメージをお伝えして製作していったんですよね。「実は、こういう鳥がいまして…」と語りました(笑)。

――本当に好きが詰め込まれている感じですね。

そうですね。6曲目の「君と雨に歌うソネット」も飼い鳥の話です。鳥かごの中にいる鳥さん。晴れていると飼い主さんが出かけちゃっていなくなって寂しい、でも雨の日だと飼い主さんとずっと一緒にいられるから「やったー」という嬉しい気持ちを想像しながら作っていきました。「もう少し止まないでいて」という部分はまさに、そういう気持ちを表現しています。そこから続いての「Beautiful Sunday」になります。

――なるほど、こちらは晴れたときの曲なんですね。

そうです。この曲は「鳥」というよりも「自分自身」を表現した曲で、テーマは“休みの日の過ごし方”。休日に誰かと一緒に遊びに行くのもいいですが、私はふらっと一人カフェでのんびりしたり、お買い物したりすることが好きなんですよね。そういう楽しい休日を思い描いたオシャレで明るい楽曲です。

――「大好きなカフェでエネルギーcharge」という部分にテーマが凝縮されているように感じます。続く「Cute♡Appeal」。こちらも鳥をイメージされていますか?

この曲は飛べない鳥がテーマです。仮タイトルはペンギンだったんですよ。

――飛べない鳥…ペンギン……。なるほど!

飛べない鳥は可哀想だなと思われがちですが、ペンギンや全く飛べないわけじゃないですが孔雀などは別に不幸とは感じていないと思うんです。むしろ空を飛んでいる方が危ないと思っているんじゃないかな。それが一つのテーマになっています。また、動物園や水族館にいる子たちも自由な世界を知らないっていうマイナスなイメージもありますが、彼らは何をしなくてもご飯が貰えるんですよね。可愛いポーズをして、アピールすれば、おやつがいっぱい貰える(笑)。

――だから、このタイトルなんですね!

そうです(笑)。それを裏テーマにしつつ、あとは自分自身の口癖などを歌詞に載せました。

――そういえば「将来の夢はお嫁さん」など、渕上さんの様々なエッセンスを感じるワードが入っていますね(笑)。

でしょ(笑)。

――もっとたくさんあるはずなので、探してみます! 続く「ラララ~君へ贈る歌~」は雰囲気がガラッと変わりバラード調の曲です。

この曲は私が過去に飼っていた愛鳥への想いを綴った歌です。3年前に亡くしてしまったのですが、その時の記憶、そして悲しさを乗り越えたいなという気持ち、そんな思いを伝えたくて、こういう歌を作りたいと提案させていただきました。

――歌詞を最初に見たとき、メッセージ性が強い曲が多い今回のアルバムの中でも特に想いが詰まっているように感じました。楽曲的な面でいえばピアノの音が印象的ですね。

すごく静かな曲なので、歌うのにも神経を使います。大変でした。

――逆にいえばそれだけ想いが込めやすい曲に仕上がっていますよね。

そうですね。