▼自分から共感しにいきたい

――ここからはアルバムの話を聞いていければと思っています。アルバムの話自体はいつごろからスタートしたんですか?

昨年の春から夏にかけてくらい、ですね。アルバム発売が決まってから、楽曲を誰に制作していただくかを考えたり、そこからオファーをしたり、私も企画から入ってていねいに進行してきたので、レコーディングがギリギリになってしまいました。レコーディングや撮影が終わったのは12月ころでした。

――相坂さんは今回、企画からガッツリ入られているということで、そのあたりを詳しく聞きたいと思っています。まず気になるのは、タイトルですよね。『屋上の真ん中 で君の心は青く香るまま』。

最初に私が出した案のときは「君の心は青く香るまま」というタイトルだったんです。「心が青い」には、「青臭い」とか「若々しい」「まだ成熟していない」という意味を込めています。

――その発想はどこから?

大人になったら自分に嘘をつかなければいけないときもあるじゃないですか。そういったことを簡単にできない、いわば染まっていない人たち。私はそういう人たちが好きなので、「大人になりきれない人たち」に、その気持ちを変わらず持ち続けて欲しいという希望を込めています。

――そのままでいいよ、と。

そう、そのままでいいよと言ってあげたいんです。

――「屋上の真ん中」というワードも気になります。

「屋上の真ん中」については、打ち合わせを続けていくうちに、情景もイメージしやすい方がいいという話になって、じゃあどこなのかなと考えたとき、まずいろんな人に当てはまることばがいいなと。そうやって考えていくうちに、屋上の真ん中って開放感があって晴れやかでもあるし、思い詰めた人が立つ場所でもあるなと思ったんです。

――相坂さん自身が屋上に思い入れがあるとかではなく。

屋上に立ってみたいなとは思ってはいるんですけど……学校とかでも基本的に立ち入り禁止じゃないですか。漫画やアニメでよく屋上でお昼ごはんを食べていたり、フェンスにもたれかかって考え事をしていたりするシーンがありますよね。私が出演した作品にも文化祭の準備をしているときに、夜の屋上で心を交わし合うというシーンがあったので、あこがれがあったのかなと思います。

――身近にあるけど入れないという、ある意味禁断の場所でもありますよね。あと、タイトルの絶妙な場所にスペースが入っているのは。

「真ん中で」で切っちゃったら面白くないなと思って、あえてその位置にスペースを入れました。まずは「屋上の真ん中」という情景を思い浮かべて、そこから続けて読んでくれればいいなと思っています。

――相坂さんは「感動を与える」より、「共感しました」と伝えてもらうことがうれしいと別のインタビューで答えていましたよね。タイトルの由来の話を聞いて、「マイナスな感情」とか「ネガティブなことば」にも目を背けないで向き合っていく相坂さんだから共感されるのかなと思っています。

はい。いつも想いはひとつです。それは「ネガティブな気持ちにも目を背けない」ということ。どんなに楽しく充実した毎日を過ごしている人でも、絶対に「いやなこと」はあると思うんです。そういった「いやなこと」が目の前に現れたときに、その感情とどう向き合っていくのか。必要以上に向き合っちゃう人もいると思うので、そういう人に「大丈夫だよ」と言ってあげたいんです。「共感してほしい」というより、「自分から共感しにいきたい」という想いがありますね。

▼こだわりたいという想いが強い大好きな一曲

――まずは1曲目「瞬間最大me」です。まさにアルバムの1トラック目というか、世界観がすごく表現されているなと。

私は、大森靖子さんが作り出す世界観にとてもあこがれがあって、今回は作詞・曲をお願いしました。「女の子ってかわいいだけじゃないよね」という、「女の子が隠し持っている、ちょっと毒のある部分」をすてきに表現される方なんです。

――今回の楽曲制作陣はほとんど相坂さんがオファーをしたんですよね。

はい。ほんとうにお願いしてよかったです。私が見てほしかった「相坂優歌」を楽曲で表現していただきました。レコーディングでも何度も歌わせていただいて、もっとこだわりたいという想いが強く出てしまうほど、大好きな一曲になりました。MVも楽しく撮影できました。


――サビの衝撃度ももちろんですけど、Aメロから"私はからだがあるからいたい 遺体になる前に会いたい"とはじまって、かと思えば"ピンクのサイダーみ"が出て来る、歌詞のバランスが絶妙だなと。

そうなんですよ。そのバランスを生み出せるのが、大森さんならでは。最初に歌詞でびっくりされる方もいると思います。ちょっと病んでるのかな、とか。でも、そうではなくて、当たり前のことを、ただシンプルに言っているだけなんです。そこを受け入れて欲しいですね。

――まさにそういったところなんですけど、"清純じゃないとダメなんて不純だろ 悪いことしてないよ"という歌詞がとても好きです。タイトルの由来については聞きましたか?

直接は聞いていません。でも、Bメロの"旬が過ぎて 堕ちてしまっても 怖くはない 私が選んだから"という歌詞から「私が選んで、ここまでやってきたから、いまこの瞬間がある」という意味で、「最大瞬間風速」「いまが絶頂、最高」なのかなと解釈しています。

――そこから1stシングル「透明な夜空」、2ndシングル「セルリアンスカッシュ」をはさんで、「Insomnia」に続きます。

「Insomnia」の作詞は山本メーコさん、作曲は宅見将典さんにお願いした楽曲です。おふたりは『甘城ブリリアントパーク』でお世話になっている方たちなんです。宅見さんがこれまで作られた楽曲の中から、私がお気に入りの楽曲を上げて「こういう雰囲気でお願いします」と作ってもらいました。山本さんも、女の子のかわいいだけじゃない部分を上手に書かれるんです。今回は、私が事細かに状況を説明して詞を書いていただきました。「こんな主人公がいて、こういう風に男の子に恋をして」と。

――片思いの女の子の気持ちを表現した楽曲ですけど、そのタイトルが不眠症という意味を持つ「Insomnia」というのがまた素晴らしいですね。

センスのかたまりだと思います! "地球滅亡の瞬間 キミと居たい"とか、たしかに女の子ってこんな極端なところがあるよねって思います。「恋して眠れない」と言うだけならかわいいんですけど、それを不眠症で表現する。好きですね。