NECは2月5日、多数の自動車やスマートフォンなどの通信端末が存在する不安定な通信環境でも、リアルタイムに自動車が周辺情報を共有できる適応ネットワーク制御技術を開発したと発表した。

緊急度の高い端末の発見と無線リソース調整を実現

モバイルネットワークの標準化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、自動車向けの通信要件を「通信遅延は100ミリ秒以下」で「通信成功率は95%以上」と掲げている。

しかし、モバイルネットワークでは無線基地局あたりに接続する通信端末の数が増えるほど1台あたりの通信遅延は増加するほか、通信遅延に影響を及ぼす無線品質は通信端末ごとに異なり刻々と変動するため、自動車が100台規模で集まる事故の多い交差点などでは安定的に通信遅延を100ミリ秒以下に抑えることができなかったという。

新技術は、100台規模の自動車の自動運転を想定した交差点での環境で、モバイルネットワークで発生する通信遅延を目標時間(100ミリ秒)以内に抑制する適応ネットワーク制御技術。特徴として「通信データの流れから緊急度の高い端末の発見」「目標時間内にデータ送信を完了させる無線リソース調整」の2点を挙げる。

緊急度の高い端末の発見に関しては、通信遅延を目標時間内に抑えるためには、瞬時にどの通信端末が目標時間までの余裕がないかを把握することが重要になるため、各通信端末の通信データの流れの変化から順調にデータ送信が進んでいるかの緊急度を算出し、そこから瞬時に緊急度の高い通信端末の特定を可能にするという。

無線リソース調整については、通信遅延を目標時間内に抑えるためには、目標時間内にデータ送信を完了させることが重要になることから、無線基地局に接続している全通信端末の緊急度から無線基地局で割り当てる帯域や通信時間(無線リソース)を瞬時に通信端末間で調整し、目標時間内におけるデータ送信の完了を可能にするとしている。

  • 適応ネットワーク制御技術の仕組み

    適応ネットワーク制御技術の仕組み

将来的には自動運転などへの応用展開に期待

同技術は、実在する交通環境での自動車の自動運転への適応を想定し、100台規模の移動する自動車やスマートフォンなどの通信端末がLTE無線基地局に接続する環境下でシミュレーション実験を行い、自動車の通信遅延を100ミリ秒以下、かつ通信成功率が95%になることを検証した。

これは、従来の手法であるProportional Fairness法と比べて5倍以上の改善になるという。また、同技術の応用事例としては自動車の自動運転をはじめ、工場や倉庫における自動搬送車、警備ロボット、災害時の調査ロボット、検査や宅配のためのドローンの自動運行など、多様な領域の社会システムに応用するために実証・製品化を進めていく考えだ。

なお、今回開発したネットワーク制御技術の一部は、2016年度から同社が参画している、総務省の「多数デバイスを収容する携帯電話網に関する高効率通信方式の研究開発」の一環として進めてきた研究成果となる。