情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)は、同研究所 情報学プリンシプル研究系 稲邑哲也准教授の研究グループが開発したロボット環境シミュレーター「SIGVerse」が、国際的なロボット大会「World Robot Summit(WRS)」 で実施されるロボット競技会において、シミュレーターとして活用されることを発表した。

  • 社会的知能発生学シミュレーター「SIGVerse」

    社会的知能発生学シミュレーター「SIGVerse」

SIGVerseは、実機ではなく仮想現実空間のロボットを使って、人間とロボットの相互作用(インタラクション)によりタスクを達成するための、知能ロボットシステムの実験や評価を行うシミュレーター。

従来のロボットシミュレーターでは難しかった、人間と仮想ロボットのインタラクションを可能にしているのが特徴。VRアプリケーション作成向けプラットフォーム「Unity」と、知能ロボットのソフトウェア開発環境の「ROS」(Robot Operating System)を統合し、リアルタイム通信を実現している。これにより、SIGVerseでは人間がヘッドマウントディスプレーなどを装着して仮想空間上のアバターにログインし、身振り手振りや音声対話をすることで仮想ロボットと身体的、社会的なインタラクションを行える。

また、WRSは、世界のロボット関係者が日々の生活や社会、産業分野でのロボットの社会実装と研究開発を加速させることを目的に開催されるロボットイベント。プログラムにはSIGVerseがシミュレーターとして活用されるロボット競技会「World Robot Challenge」と最新のロボット技術の展示会「World Robot Expo」があり、プレ大会が2018年10月17日〜21日に東京ビッグサイトで、本大会が2020年10月に愛知県国際展示場(一部競技は2020年8月に福島ロボットテストフィールド)で開催される。

World Robot Challengeでは、「ものづくり」「サービス」「インフラ・災害対応」「ジュニア」の4カテゴリーで競技が行われ、SIGVerseは「サービスカテゴリー」の「パートナーロボットチャレンジ(バーチャルスペース)」の基盤システムとして活用される。

同種目では、人間との対話を通じて仮想ロボットが部屋を片付けたり、ロボットが人間の作業の支援を自然言語を用いて行ったりするタスクなどが実施されることから、Unity経由でアバターにログインした人間とROSで制御されている仮想現実空間のロボットがリアルタイムにインタラクションを行える機能が評価され、SIGVerseが活用されることになったという。

なお、SIGVerseは昨年7月に名古屋市で開催された「ロボカップ2017名古屋世界大会」においても、トヨタ自動車製の生活支援ロボット(HSR)と人間が対話するためのシステムに実装された。研究グループは今後も、社会で役に立つロボットの知能研究に貢献するために、SIGVerseの機能改良を進めていくとしている。