ANSYSの日本法人であるアンシス・ジャパンは1月30日、マルチフィジックス解析ツール「ANSYS」の最新リリース「ANSYS 19」を発表した。同日、アンシス・ジャパンは記者向けに同製品の説明会を開催し、最新リリースで追加された機能や、強化された機能などを説明した。

ANSYS 19の最新版リリースのテーマは「複雑さを緩和することで、シミュレーションの活用拡大をさらに促進する」ことだといい、構造物から流体、システム、エレクトロニクスと、幅広い業界をサポートするものとなっている。

流体解析製品について

まず流体解析製品において、液体モデルのボリュームを追加したことで、界面の不安定性や表面張力の影響を直接追跡し、従来より短時間かつ高精度で計算できるようになった。

  • ANSYS 19

    液滴分裂のハイブリッドモデルが追加され、より高精度での計算が可能に

また、高機能ポストプロセッサの「EnSight」もパッケージに追加。これにより、通常の可視化機能に加え、アニメーション機能をはじめとしたさまざまな機能が使用できる。アンシスジャパン 技術部の坪井一正氏は「従来のポスト処理に加え、EnSightが使えるようになることで、解析の結果をよりリアルに見られるようになった。これにより、今まで以上に視覚的なアピールが可能となる」と説明した。

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    高機能ポストプロセッサが追加され、解析の結果の視認性が向上

エレクトロニクス製品について

エレクトロニクス製品においては、並列処理ライセンスを統合する。これまでエレクトロニクス製品専用のHPCと流体/構造用のHPCは別ライセンスとなっていたところを、1つのライセンス、つまり同じHPCにて使用することが可能となった。

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    「ANSYS HPC」と「ANSYS Electronics HPC」を1つのHPC上で使用できるようになった

さらに、分散処理オプションが標準機能化。これにより、ユーザーはHPCオプションなしで、4分散までの解析が可能になった。加えて、リボンインタフェースが採用されたことで直感的な操作ができるようになったほか、変数設定時の文字入力オートコンプリート機能なども追加されており、従来製品よりも操作がシンプルになっている。

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    分散処理オプションが標準機能化

構造製品について

構造製品においては、他社のツールでつくったモデルをインプットする機能が追加されたことで、作業の効率化を実現。これによりユーザーは、接点の荷重やシェルなどの特性を別のツールを用いて読み込む必要がなくなり、解析までの手順が少なくなる。

また、指定した材料が、指定した環境で最適な強度を保つために必要な形状をしるためのシミュレーションも可能だ。この際、「この部分は削らない」といった条件を付加することも可能で、所望の物性をもつ材料の開発につなげられる。なお、このシミュレーションに必要な計算は、並列解析(HPC)3000コア以上でも高いパフォーマンスで実行できる。

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    並列解析(HPC)3000コア以上でも高いパフォーマンスを発揮できる

システム製品について

システム製品の最新リリースにおいては、「ワークフローの統合化」「パフォーマンスとユーザビリティ」「機能安全認証対応のHMI(human machine interface)設計機能」「自動車システムとソフトウェア用の専用ソリューション」の4つがテーマであるという。

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    組み込みソフトウェア開発を支援するための4つのテーマと機能の詳細

具体的には、システムレベルの検証工数を削減する、閉ループテストのシナリオ記録機能や、より直感的な操作を可能とするためのGUI(グラフィカルユーザインタフェース)を採用しているほか、Windowsのマルチタッチ機能をサポートするなど、さまざまな機能が追加されている。