国際科学技術財団は、2018年(第34回)の日本国際賞を、スマートフォンなどの電子機器のほか多くの身近な製品に用いられているリチウムイオン電池を開発した旭化成名誉フェローで名城大学教授の吉野彰氏(70)と、生体内で極めて重要な働きをする二つのリンパ球を発見した米国とオーストラリアの2研究者の、合わせて3人に贈ることを決めた。同財団が30日午後、東京都内で開いた記者会見で発表した。授賞式は4月18日に都内で開催される。

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    記者会見で受賞の喜びを語る、左から吉野彰氏、マックス・クーパー氏、ジャック・ミラー氏

吉野氏は「資源・エネルギー、環境、社会基盤」分野の受賞で、授賞理由は「リチウムイオン電池の開発」。吉野氏は1972年に京都大学大学院工学研究科修了。80年代初めに電池の電極にコバルト酸リチウムとカーボン材料を使うと電極間をリチウムイオンが行き来して電池の役割を果たすことを実証。リチウムイオン電池の原型を開発して1985年に特許出願した。その後1991年に旭化成などによって実用化された。この電池は小型で大容量の上、充電できるのが特長。ノートパソコンやスマートフォンなどのモバイル機器、デジタルカメラ、携帯型音楽プレーヤーや電気自動車など現在では幅広く利用されている。

吉野氏は受賞者発表記者会見で「今日は実は70歳、古希の誕生日で、古希の誕生日にはいいことが起きる、というのが我が家の言い伝えだったがまさにその通りになった。リチウムイオン電池については多くの研究者がその後も開発に携わっているが、若い研究者が私の受賞を契機に素晴らしいイノベーションを生み出してくれると思う」などと喜びを語った。同氏はノーベル化学賞の候補としても期待されている。

吉野氏のほかに受賞が決まったのは、米国エモリー大学医学部教授のマックス・クーパー氏(84)と、オーストラリアのウォルター・アンド・イライザ・ホール医学研究所名誉教授のジャック・ミラー氏(86)。2人は「医学・薬学」分野の受賞で授賞理由は「Bリンパ球・Tリンパ球系列の発見とそれがもたらした疾患の病態解明と治療法開発」。

クーパー氏とミラー氏は、1960年代初めから精力的に分子生物学の研究を進め、体内に侵入した異物に対する免疫をつかさどる2つの主要細胞系列であるBリンパ球とTリンパ球の存在を明らかにした。国際科学技術財団は「2人の先駆的な業績は、その後半世紀あまりにわたる免疫学の基礎・応用研究の発展の礎となった。近年注目を集めるがん治療薬や免疫疾患の新薬も2人の発見があったからこそ誕生した」としている。

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