いま2020年の商用化に向けて開発が続けられている、次世代の移動通信規格「5G」。未来の通信は、私たちの生活をどのように変えていくのでしょうか。KDDIでは25日、JR東日本と協力したユニークな5Gの取り組みを発表しました。

  • KDDIとJR東日本が、5GとVRを活用したユニークなイベントを開催中です

遠くの商店街でウィンドウショッピング!?

KDDIとJR東日本が、1月25日から27日までJR上野駅で実施する「南三陸さんさん商店街へ瞬間移動。au 5Gで現地体感イベント」は、上野駅にいながらにして、宮城県の同商店街での買い物を疑似体験できるものでした。

  • イベントの概要。遠く離れた場所にある商店街をウィンドウショッピングできる仕掛けです

これは、上野駅にいるVRゴーグルを装着した体験者に、同商店街で撮影中の360度カメラの映像をリアルタイムに届けることで実現するもの。商店街の方々とは「いまの旬は何ですか」「オススメの商品はありますか」などの会話を交わすことも可能です。高精細な大容量の映像データを遅延なく送受信できる5Gだからこそ実現できた試みと言えます。

  • 現地の商店街の方と会話も可能。いまの旬の商品を聞くことができます

南三陸さんさん商店街は、飲食店や鮮魚店など合わせて28店舗が営業しています。その商店街を擬似的に歩くことができるわけですが、残念ながら今回のイベントでは「購入して届けてもらう」ところまでは対応していません。現地の人にオススメを聞いて、同じ商品を、上野駅構内で実施中の物産展で購入するという流れになります。

  • 上野駅構内では、宮城産直市が開催中。VRゴーグルで現地の方々に聞いた旬の食材を、すぐに上野駅で購入できる仕掛けです

  • 本イベントは、上野駅イベントスペースにて27日まで開催中

協業は両社にメリット

KDDI モバイル技術本部の松永彰氏によると、今回のイベントで5G通信に用いられるのは28GHz帯の電波。周波数が高いため、これまでスマートフォンで利用されてきた4G LTEの電波よりも直進性が高く、また減衰が大きいので長い距離を飛びづらいといった特性があります。したがって、電波を絞って遠くまで届けるビームフォーミングという技術を利用する必要があります。

  • 登壇したKDDI モバイル技術本部 シニアディレクターの松永彰氏。5G通信に用いられる28GHz帯の電波について解説しました

松永氏は「水を撒くことに例えれば、4Gはスプリンクラー、5Gはホースを絞って狙って届けるというイメージです」と説明しました。このほか、ユーザーを追いかけるようにして電波を送るビームトラッキングなどの技術も利用します。

KDDIとJR東日本では、これまでもにも走行中の列車内のモニターに向けて8K / 4Kの映像を転送したり、営業中の駅で5Gのフィールド試験を行うなど、共同でいくつかの実証実験を行ってきました。

  • KDDIとJR東日本では、これまでも5Gに関する実証実験を実施済み。これらの積み重ねがあったため、今回のイベントもスムーズな運営が可能だったそうです

東日本旅客鉄道 IT・Suica事業本部の高島昭治氏は「お客様に駅や列車で快適に過ごしていただくため、通信環境の整備は重要と考えています。5Gにより今後どんな新しいサービスが実現できるか、いまも検討を重ねています」と話します。KDDIと進める取り組みは、JR東日本側にも良い示唆を与えているようです。

  • 東日本旅客鉄道 IT・Suica事業本部 業務推進部 課長の高島昭治氏。KDDIとの協業は、JRにとっても大きなメリットがあると話していました

また「商店街の人と交流することで、地域の魅力を知ってもらえたら。そのうえで、宮城にも足を運んでもらいたい」とJR東日本の高島氏。ここで得た知見は今後、グループ企業とも共有しながらサービスの向上に努めると話します。

KDDIの松永氏は「日本でも有数のターミナル駅である上野駅で、まずは多くの人に5Gの素晴らしさを実感してもらいたい。その反響を見れることが、今回のイベントの大きな収穫になる」と意気込んでいました。

  • KDDIが5Gで目指す世界観。同社ではエンタメ、より良い社会づくり、人と人のコミュニケーションといった場面で技術を活用していく考えです