今回で4回目の開催となるウェアラブルEXPO。HMD(Head-mounted display)に代表されるデバイスなどに注目が集まりがちではあるが、それらの身に付けるデバイスを十二分に活かすためには、最適なコンテンツが必要となるのは皆さまもお判りのはず。そこで今回は、会場内でも注目を集めていたARアプリ開発SDK「wikitude(ウィキチュード)」を出展していたグレープシティブースのレポートをお送りしよう。

  • グレープシティブースよりひとコマ

    グレープシティブースよりひとコマ

「グレープシティ公式サイト内にあるWikitudeサイト」オフィシャルサイトより

グレープシティ公式サイト内にあるWikitudeの情報サイト

「ARのコンテンツ制作、しかも、アプリで提供するというのはハードルが高いんじゃないだろうか?」と心配の声も聴かれそうだが、そこはご心配なさらずに。。解説員の方の言葉を借りれば、モバイルアプリの開発経験があればすぐに使いこなすことが可能なのだそう。

「wikitude」では、モバイルカメラの映像に映る立体物を認識して事前に登録しておいた付加情報を表示させることが可能な物体認識型、自己位置推定と周囲の地図作成を行う「SLAM」( simultaneous localization and mapping)技術に基づいて空間そのものを認識するマーカーレス型、精度の高い画像認識とトラッキング技術により特定の画像をマーカーとして登録してコンテンツを仕込むことも可能な画像認識型、スマートフォンやタブレット端末を特定の場所に移動させることで映像に情報を付加することも可能なロケーションベース型のARアプリケーションを開発できる。

物体認識型のARアプリの例としては、非常にボタン数の増えたテレビリモコンをスマホでかざすと各ボタンの名称や機能解説等の情報を表示するリッチな取扱説明書なども考えられる。マーカーレス型では、空間そのものを認識する特徴を活かしてマンションショールームのバーチャル家具配置アプリなどが考えられる。実際に、会場内のタブレット端末でブース内にソファを置くとどのような見栄えになるかが確認できるデモを見ることができたが、縮尺はもちろんカメラ位置に応じた3Dのモデルがとても自然なカタチで表示されていた。

  • こちらがマーカーレス型ARアプリの一例。自己位置推定と周囲の地図作成を行う「SLAM」技術によって現実と仮想をシームレスに映し出すことが可能

    こちらがマーカーレス型ARアプリの一例。自己位置推定と周囲の地図作成を行う「SLAM」技術によって現実と仮想をシームレスに映し出すことが可能

画像認識型のARアプリも、先のマーカーレス型同様会場内で実際にその精度の高さを試すことができた。例として作られていたのは、トレーディングカードに描かれたキャラクターがカメラ越しの映像のなかで立体として表示されるというもの。そしてロケーションベース型は、この「wikitude」を用いて作られた防災アプリも存在する。東京都港区の「港区防災アプリ」もそれで、どのような利活用をしたかについてはWebサイトにて「AR開発者インタビュー」というカタチで紹介されているので気になった方はチェックして見て欲しい。

  • イラストが描かれたトレーディングカードをARアプリで見てみると……ご覧のように3Dモデルがドーンと表示される。しかも、写真では1枚のカードを読み取っている格好だが、仮に複数枚あったとしてもそれぞれを認識し表示させることもできる

    イラストが描かれたトレーディングカードをARアプリで見てみると……ご覧のように3Dモデルがドーンと表示される。しかも、写真では1枚のカードを読み取っている格好だが、仮に複数枚あったとしてもそれぞれを認識し表示させることもできる

オーストリアのWikitude GmbHが開発する「wikitude」はiOS・Androidのネイティブアプリ開発環境はもちろん、Unity、Cordova、Xamarinなどさまざまな開発環境に組み込みが容易なAR用のSDK(ライブラリ)となっている。JavaScriptで各機能を呼び出すコードを記述できるほか、ARに最適化された高性能なクラウドサービスも別途用意されている。しかも、試用期間が制限無く無料で開発できるという、技術を学ばなければならない開発者にとってはとても嬉しい特典も。もちろん、制作したアプリケーションを運用・配布する段になったらライセンスを購入する必要があるが「wikitudeで実際にどんなことができるのか?」を、手を動かしながら肌で感じることができるのは魅力なのではないだろうか。

60fps・フルHDの解像度でレンダリングでき、今脚光を浴びているスマートグラス(エプソン販売「MOVERIO BT-200」等)にも対応しているので、新たな切り口や価値を提供するARアプリを生み出すことも夢ではない。我こそは!と思う方は是非チェックしてみて欲しい。