近年、城人気がかつてない高まりを見せている。城ブームは2006年日本城郭協会が定めた「日本百名城」を機に起きたが、今、インバウンド効果も相まって新たに城の魅力が見直されている。そのひとつが、現存12天守のひとつで日本最古の木造天守を今に残す、国宝五城にも数えられている愛知県犬山市の犬山城だ。特徴は天守閣のみならず、古い町並みやパワースポット等が一体となった城下町観光が若い女性や若者に高い人気を得ていることだ。

  • 近年、多くの若者でにぎわう愛知県犬山市「国宝犬山城」の城下町

    近年、多くの若者でにぎわう愛知県犬山市「国宝犬山城」の城下町。SNS等で若者に人気となり、犬山城の2016年の来場者数は過去最高の54万人超えを記録した

2003年に19万人台だったのが54万人越えに

犬山市と言えば犬山城のほか、国の重要文化財に指定された明治時代の11軒の歴史的建物などを集めた歴史テーマパーク「明治村」や、約70種950頭のサルと触れ合える「日本モンキーセンター」など人気観光施設も多く、2015年度の観光入込客数569万人を誇る。

犬山城を見てみると、入場者数は2003年度には過去最低の19万人台となり、その後、低迷が続いた。それが、ここ10年連続して来場者数が増えおり、2016年度は過去最高の54万人超えを記録した。その原動力となったのがSNSだ。何が女性や若い人の心をつかんだのか。今回は、今注目の犬山城と城下町観光の魅力をたっぷり紹介しよう。

  • 木曽川の畔の小高い丘の上に建つ日本最古の木造天守を今に残す、国宝5城のひとつ・犬山城

    木曽川の畔の小高い丘の上に建つ日本最古の木造天守を今に残す、国宝5城のひとつ・犬山城

魅力は日本最古の木造天守だけじゃない!

犬山城は室町時代、天文6(1537)年に織田信長の叔父、織田信康が築いたと伝えられる。木曽川の南岸、標高80mの城山に築かれた背後を断崖に守られた典型的な後堅固の城だ。城郭は城下町と一体となった総構えの構造で、天守は望楼型三重4階地下2階。信長・秀吉・家康が奪い合い、様々な歴史の舞台となった城は日本最古の木造天守を今に残し、昭和10(1935)年国宝に指定された。

それでは犬山城へと向かってみよう。犬山へは名古屋から名鉄犬山線の犬山駅へ快速特急で約25分。犬山駅を出て約850m直進すると、犬山城へと続く本町通りがある。土日には駅からここに向かって歩く人の姿が絶えない。この本町通りに入るとそのにぎわいは原宿や谷中にも匹敵する混雑ぶりで、数年前を知っている者は驚きで一瞬目を奪われる。

  • 名鉄犬山駅を出て約850m直進すると犬山城へ。その間に、古い町並みが続く約650mの「本通り」がある

    名鉄犬山駅を出て約850m直進すると犬山城へ。その間に、古い町並みが続く約650mの「本通り」がある

かつて、城観光と言えば中高年のイメージがあったが、現在の犬山城下には若者や女性、カップルの姿が目立つ。城の登城口まで続く約650mの本町通りには着物のレンタル店も数軒あり、カラフルな着物姿の若い女性グループにも多く出会う。

  • 道の両側には多くの店舗や観光施設などが立ち並ぶ。着物のレンタルもあり、着物姿の若い女性も多く見かける

    道の両側には多くの店舗や観光施設などが立ち並ぶ。着物のレンタルもあり、着物姿の若い女性も多く見かける

だが、この犬山人気はここ1.2年のことだという。ブレイクのきっかけは地域の地道なプロモーションの効果もあるが、爆発的なブームはやはりSNSの効果が大きいと言う。中でも、インスタブームは犬山人気を不動のものにした。本町通りではここ数年、魅力的な店舗の開業も相次いだ。カラフルな「恋小町だんご」など、インスタ映えする人気商品も人気を牽引している。

  • ご当地マンホールの絵柄はお城と木曽川の鵜飼い

    ご当地マンホールの絵柄はお城と木曽川の鵜飼い

レトロカフェには看板猫も

本町通りは2009年に電線地中化工事と道路美装化工事を行ったことで視界が広がり、城下町はより江戸時代の風情を楽しめるようになった。今では通りの両側に多数の店舗が並び、魅力的なまち歩きコースとなっている。

通りには、江戸期の建築様式をもつ木造建築「旧磯部家住宅・よってちょう庵」や、明治42(1909)年建造の「本町車山蔵」、犬山祭の山車からくりなどを展示する「からくり展示館」など、城下町観光施設も集積している。

  • 「旧磯部家住宅・よってちょう庵」は、江戸期の建築様式をもつ木造建築

    「旧磯部家住宅・よってちょう庵」は、江戸期の建築様式をもつ木造建築

  • 「旧磯部家住宅・よってちょう庵」は入場無料なのもうれしいところ

    「旧磯部家住宅・よってちょう庵」は入場無料なのもうれしいところ

  • 明治42(1909)年建造の「本町車山蔵」

    明治42(1909)年建造の「本町車山蔵」

  • 犬山祭の山車からくりなどを展示する「からくり展示館」(入場料: 100円)

    犬山祭の山車からくりなどを展示する「からくり展示館」(入場料: 100円)

  • 犬山祭の山車からくりなどを展示している

    犬山祭の山車からくりなどを展示している

また、本町通りから脇に入った道にも楽しみは多い。旧磯部家住宅の先、本町通りを右手に折れた寺内通りには、看板猫がいるレトロカフェ「珈琲ボタン」がある。古い日本家屋を改装したカフェは、外観も内装もレトロ。陽光が差し込む窓際の席の奥には、ひとりでも寛げる本棚を備えたカウンター席やゆったりとしたテーブル席がある。

  • 猫がいるレトロ喫茶「珈琲ボタン」

    猫がいるレトロ喫茶「珈琲ボタン」

こだわりの自家焙煎珈琲やエスプレッソなどのカフェメニューのほか、自家製のチーズケーキ、モーニングや日替わりのランチセット(900円/ドリンクセット1,080円/ドリンク・デザートセット1,280円)、キーマカレーやサンドイッチなどの軽食も提供している。

  • 「珈琲ボタン」は本町通りから旧磯部家住宅の先、右手の寺内町通りを入ったところにある

    「珈琲ボタン」は本町通りから旧磯部家住宅の先、右手の寺内町通りを入ったところにある

  • 「キーマカレー」(1,080円)はポテトチップス付き(写真提供: 珈琲ボタン)

    「キーマカレー」(1,080円)はポテトチップス付き(写真提供: 珈琲ボタン)

  • コーヒー「ボタンブレンド」(450円)でまったりと

    コーヒー「ボタンブレンド」(450円)でまったりと

店内では、ライブが開催されることもある。まち歩きに疲れた時やひとり旅時間に浸りたい時に、喧騒を離れて静かに過ごせる居心地のいい場所だ。看板猫のボタンちゃんはお散歩でお出かけの時もあるが、その名も「ボタンブレンド」(450円)などとともに、その出会いをぜひ楽しみたい。

  • 看板猫のボタンちゃんはお散歩で留守にしていることもある(写真提供: 珈琲ボタン)

続いては、"倍返し神社"で知られたパワースポット、そして、国宝を眺望できる温泉を紹介しよう。