長期間住んでいる部屋、家賃の値引き交渉をしたいがどうすればよい?

今は家賃の減額交渉がしやすい。大家さんは長く住み続けて欲しいと思っている

同じ賃貸住宅に長く住んでいるという方も多いのではないでしょうか。

昨年12月に日本賃貸住宅管理協会が発表した「賃貸住宅市場景況感調査」によると、賃貸住宅に4年以上の長期にわたって住んでいる割合は、(学生を除く)単身世帯で26.2%、ファミリー世帯では74.3%にも上ります。

入居時の賃貸借契約の内容をそのまま引き継いでいるケースも少なくないと思いますが、住まい環境の快適さを向上させるためにも契約内容の定期的な見直しは大事です。

特に、空き家が増え賃貸住宅の供給が過剰となる中、現在の家賃が相場より割高になっている場合には、適正水準まで減額したいものです。

今や礼金を無料とすることも珍しくなく、昔のように短期間で入居者が入れ替わることで、大家さんの懐が温まる時代ではありません。むしろ、入居者を確保した不動産屋さんに、広告料(いわゆる「AD」)の名目で大家さんからお金を支払うケースも増えているようです。

つまり、入居者に長く住み続けて欲しいと思うのが大家さんの一般的な考え方であり、家賃の減額交渉にも応じてくれやすい状況があるといえるでしょう。

ここでは、どのように値引き交渉すればよいのか、その考え方をみていきましょう。

周辺の家賃相場を知ることが第一。家賃減額はいつお願いしてもいい

家賃減額の交渉を考えたら、まずは周辺の家賃相場を知ることが第一です。

間取りや広さ、築年数などが似ている周辺物件の家賃水準がどれくらいかをインターネットを使って簡単に調べることができます。懇意にしている不動産会社に聞けば、より詳しい情報が手に入るでしょう。

その結果、現在支払っている家賃と周辺相場に大きな開きがある場合には、家賃の減額を物件の管理会社(自主管理の物件なら大家さん)にお願いします。

切り出すタイミングは、契約更新時期に限らずいつでも構いません。

貸主にも借主にも、家賃の変更をお願いする「借賃増減請求権」という権利が与えられています(借地借家法第32条)。この権利を行使できるのは、周辺の賃料相場や経済事情が変化した時などであり、契約時期によるものではありません。

むしろ、賃貸市場が最も冷え込むといわれる時期(5月のGW明けから、夏休みやお盆休みを挟む8月ころ)をあえて選んで交渉に持ち込む方もいるくらいです。

大家さんにとっても「特別な値下げをした」という理由を与える。譲歩案があるとなお良し!

伝え方としては、以下の4点を含めて家賃の引き下げをお願いすると受け入れてもらいやすいでしょう。

① 長期間、大切に部屋を使って居住していること(特別感)
② 今後も長く住んでいきたいこと(安心材料)
③ 具体的に調べた結果、周辺の相場よりも家賃が高いこと(具体的根拠)
④ 家賃が下がらない場合には、引っ越しも検討せざるを得ないこと(プランB)

大家さんが恐れるのは、退去されることだけに留まりません。一度家賃を値下げしたことによって、他の入居者からも「値下げをしてくれ」と家賃の減額が連鎖してしまうことです。

ですので、長期間住んでいることや部屋を綺麗に使用している旨を伝えることで「特別な値下げ」という理由を与えることが望ましいといえます。

また、値下げ交渉を行う入居者は、しばらく住み続けようと思う方がほとんどでしょう。例えば「絶対に1年は住み続ける!」ということが分かっている場合には、「値下げしてくれれば1年は退去しない」という譲歩案を与えると、より話がスムースに進むでしょう。

家賃が下がらない物件もある。家賃交渉を行いやすい物件の特徴とは?

もっとも、どの物件でも家賃の減額が成功するわけではありません。入居者が絶えることのない人気物件では貸主は強気です。

家賃交渉を行いやすい物件の特徴としては、以下のような物件です。

駅から遠いなど立地に問題がある 現在住んでいる同じマンションに(募集期間の長い)空室がある (引っ越し先の候補となる)類似物件が、居住中物件より安い賃料で募集中である 周辺に新築の賃貸マンションができた(供給が過剰になった) 高層ビルができるなど、陽当たりや風通しが居住開始当初より明らかに悪化した

そして、物件のみならず入居者自身の状況も重要です。

家賃滞納や騒音トラブルを起こすなど、生活態度の悪い入居者は「できれば出ていって欲しい」と思われるものです。長く住んで欲しい入居者であるということも家賃交渉の成否を握る大きな要素です。

大家さんの事情も様々。値下げに難色を示す場合は別の提案もアリ

また、大家さんの事情にもよります。現在のように不動産相場が上昇している局面では、賃貸アパートの売却が活発化します。

詳細は割愛しますが、投資家は「利回り」という指標を重視するため、家賃を1,000円下げただけでも売却価格が数十万円変わるケースもあります。そのため、大家さんとしては家賃ではなく、一回で終わる出費が望ましいと判断します。

家賃減額に難色を示す場合には、更新料の免除や一カ月だけの家賃免除などを提案して、実質的な値下げを成功させるのも次善策として考えましょう。

誠実な話し合いが全員にとって得。家賃にこだわらず生活環境の見直しを

交渉が決裂した場合、住み続けずに近隣の安い物件に引っ越すというのも選択肢ではあります。

ただ、引っ越し費用や次の部屋を契約するための仲介手数料や礼金などの費用もかさみます。それらを総合的に考えて判断しましょう。

また、第三者を交えた判断を仰ぎたい場合には、家賃減額請求を調停によって行うという手段もあります。調停でも合意できなければ裁判になります。

ただし裁判ともなれば客観性を求められ、鑑定士による賃料査定を含め、相応の時間や費用がかかります。そのため、できるだけ当事者同士の話し合いで決着させたいものです。

そのためにも、弱みに付け込むような交渉や大家さん側の気持ちをくみ取らず一方的な要求を突きつけるようなやり方はお勧めできません。

入居当時、一旦は合意した家賃を引き下げる交渉です。そして合意した後には、大家さんとの関係も続きます。相手方に納得してもらうためにも、できるだけ具体的な理由を準備した上で、誠実な話し合いをしたいですね。

最後に、長期間同じ部屋に住む場合には、部屋の内部環境も変わります。

エアコンなどの設備が古くなり、故障や不具合が見つかった場合には基本的に大家さんの負担で修繕してくれます。

家賃にこだわらず、生活環境を総点検することで快適な暮らしを手に入れましょう。

(加藤 豊:不動産コンサルタント)