シスコシステムズは1月17日、都内で記者会見を開き、中堅・中小企業向けブランド「Cisco Start」について、働き方改革に対応する取り組みと、新たな戦略を発表した。

2017年度の同社の売上実績は前年度比2.4倍と拡大し、Cisco Startシリーズが下支えしたことによる影響があり、新製品を含む幅広い製品が売り上げに貢献したが、その中でも「Catalyst Switch」が大きく伸張したという。

  • 売上実績の概要

    売上実績の概要

シスコシステムズ 専務執行役員 パートナー事業統括の高橋慎介氏は「Cisco Startシリーズの売り上げは従業員100人以下の企業が43%、同100人~1000人未満の企業が42%を占めた。もちろん、新規顧客も増加したが、これまでハイエンドの領域ではわれわれの製品を使い、ローエンドの領域はコンペティターの製品を導入していた企業がローエンドでもわれわれの製品を採用している事例が多い。中小企業の働き方改革の需要拡大や、ローエンドで使われていたコンシューマ製品からの乗り換えが影響している」と、分析していた。

  • シスコシステムズ 専務執行役員 パートナー事業統括の高橋慎介氏

    シスコシステムズ 専務執行役員 パートナー事業統括の高橋慎介氏

日本市場における3つの施策

そこで、さらなる売上拡大を目指し、同社では働き方改革を実現するポートフォリオの拡充を中心に、日本市場に向けた3つの戦略として「ブランドの強化」「製品・価格戦略の強化」「販売体制の強化」に取り組む。

高橋氏は、ブランド強化のポイントとして中堅・中小企業がITへの取り組みを分かりやすくするため、同社のキーとなるアーキテクチャに合わせたキャラクター「Cisco 5」を用いて、Web上などにおける製品・ソリューションをコンシェルジェとして紹介する。また、シスコアスリートアンバサダーとして12月に発表した卓球の石川佳純選手と張本智和選手を支援することで、ブランド価値の向上を図るという。

  • ブランド強化の概要

    ブランド強化の概要

製品・価格戦略の強化に関しては、クラウドやモビリティ、ビッグデータ、ソーシャルに対する中小企業の投資が拡大していることを踏まえ、ポートフォリオを拡充する。クラウド管理型ソリューション「Meraki」シリーズを投入するほか、ワイヤレスLANアクセスポイント「WAP131」の後継製品として802.11ac wave 1対応の「WAP 125」を1万円弱で販売。そして、Merakiシリーズを含めたネットワークシリーズを市場想定価格を平均10%前後見直して提供する。

  • 製品ポートフォリオ拡充の概要

    製品ポートフォリオ拡充の概要

WAP125はWAP131より小型化を図り、複数SSIDやゲストアクセス、802.1x認証、QoS、不正AP検知など企業向け無線LANに必要な機能を備えている。

  • 「WAP 125」の外観

    「WAP 125」の外観

販売体制の強化については、シスコシステムズ 常務執行役員 公共・法人事業統括 大中裕士氏 が説明した。

  • シスコシステムズ 常務執行役員 公共・法人事業統括 大中裕士氏

    シスコシステムズ 常務執行役員 公共・法人事業統括 大中裕士氏

現在、同社では国内7カ所に営業所を展開しており、従来からのパートナーとの販売体制も維持するが、地場のパートナーとの販売体制を強化するという。顧客層は、旅館やホテル、診療所、学習塾、薬局などとなり、これらの顧客は多様な形態でITを活用しているため、環境に合わせたネットワークシステムの整備を支援していく。

また、社内に新たに事業推進本部を設けており、業種別事業戦略として各業種に適したネットワークやセキュリティなどを提案し、Merakiシリーズのエコパートナーリングを強化している。さらに、サービスプロバイダーチャネル事業戦略ではサービスプロバイダーとともに販路を確保することが重要となるため、これを通じた販売ルートに対してもCisco Startのポートフォリオを活用し、展開していく方針だ。

  • 販売体制強化の概要

    販売体制強化の概要

中小企業をいかにして取り込むか

しかし一方で、働き方改革を実現するためのIT投資の課題もあると高橋氏は指摘する。中小企業庁の調査によると、一部の企業ではコスト削減や売上増大につながる積極的なIT投資ができていない状況があり、最小限の投資に留まっているという。要因としてはIT機器を導入できる人材不足や、導入効果が評価できない、コストを負担できないといったことを挙げている。

こうした状況を鑑みて同氏は「働き方改革に伴うIT環境のニーズは、ネットワークでは法人向け品質のネットワーク接続や安定したネットワーク環境、セキュリティではリスクのないIT環境の整備、コラボレーションでは生産性向上と人材確保、ニーズに合った働き方環境の提供などが肝となる。われわれは、中小企業の抱える課題に対して、解決策を示すことで今後もCisco Startシリーズの市場を拡大することができると確信している」と力を込めた。