東北大学は、同大の研究グループが、モデル生物の1つであるショウジョウバエを用いて「決定転換」という仕組みに関わる遺伝子を同定したことを発表した。
この成果は、東北大学大学院薬学研究科の増子恵太氏、倉田祥一朗教授らによるもので、1月2日、「Cell Reports」誌に掲載された。
ショウジョウバエは、細胞の分化状態を器官ごと転換する「決定転換」というユニークな現象が50年以上前から知られているが、その仕組みはよくわかっていなかった。同現象は、傷やストレスに対する応答として、器官を丸ごとつくり変えてしまう器官の驚くべき再生現象で、50年異常も前から知られている。
今回、同研究グループは、「決定転換」により眼がハネに変わってしまうショウジョウバエ系統について研究を行った。その結果、「Wge」「Su(var)3-9」というふたつのタンパク質がこの転換を担っていることが判明した。
特に「Su(var)3-9」は、ヒストンメチル化酵素に分類されるタンパク質であり、ヒストンタンパク質上にメチル化と呼ばれる化学修飾を施すことで、さまざまな遺伝子の働きに影響を及ぼすことが知られている。これにより、「Wge」と「Su(var)3-9」は協調的にこの化学修飾を調節することで、「決定転換」現象における分化可塑性に重要な機能を果たしていることが明らかになった。
同定した遺伝子はヒトにも相同遺伝子が存在するが、 器官再生や分化転換における機能はよくわかっていない。この研究成果は、器官再生や分化転換などの再生医療分野につながる基礎的知見になると期待される。