まず汎用性が高そうなのが、TrueDepthカメラだ。これはTouch IDの後継となる生体認証、Face IDを実現するために必要なほか、ポートレートモードのセルフィー撮影や拡張現実の活用にも有効だ。このTrueDepthカメラが、iPad ProやMacBook Pro、iMacに採用されていくのは自然な流れだと感じている。

  • iPhone XのTrueDepthカメラ

Touch IDがiPadやMacBook Proに採用されたが、入力デバイスのインターフェイスが本体と一体化していないiMacや、そもそもキーボードの領域が小さく、搭載の余地がないMacBookには採用されないままだった。そうした中で、iPhone Xの登場とともに、新しくFace IDが採用され、Touch IDは過去の生体認証方式となってしまった。

iPadやMacBookシリーズ、iMacにはFaceTimeカメラ、Face Time HDカメラが搭載されており、これらをTrueDepthカメラに置き換え、MacBook Proに搭載されたT1や、iMac Proに採用されたT2の後継となるチップを備えることで、TrueDepthカメラによるFace IDを実現できる。

  • Mac向けのカスタムチップ「T1」

Mac向けのカスタムチップについて、「T1」はTouch BarとTouch IDのセキュアエレメントを備えており、MacBook Proの生体認証機能を司る存在だ。しかしiMac Proの「T2」の役割は少し性格が異なる。T2チップはシステムコントローラー、FaceTime HDカメラの画像処理エンジン、オーディオコントローラー、SSDコントローラーとして振る舞い、その最も大きな役割は、ファイルの暗号化をパフォーマンスに影響を出さずに行ったり、より安全に起動することだ。特に機械学習に関する記述もないことから、T2とTrueDepthカメラの組み合わせによるFace IDの実現は難しいのかもしれない。TrueDepthカメラをMacに搭載していくのであれば、既存の役割に加えて機械学習処理や画像情報の数値モデル化を強化した次世代チップ(「T3」?)との組み合わせによって実現していくことになるだろう。

TrueDepthカメラは赤外線によって被写体の距離を正確にマッピングでき、顔認証だけでなくSnapchatなどの顔への装飾にもそのデータが利用できる。さらに多くのモデルのiPhoneやiPad、MacにもTrueDepthカメラが搭載されるようになれば、Animojiのサポートや、FaceTime通話時に顔に装飾を施す機能など、コミュニケーション機能の強化も期待できる。

またTrueDepthカメラについては、外側のiSightカメラにも、同様の機能を持たせる可能性がある。アウトカメラに赤外線を搭載することで、空間を正確にマッピングでき、これはARKitを用いたアプリでのより正確な合成や情報表示に役立つことになる。あるいは、TrueDepthカメラと同じように、1台のカメラでの正確なポートレートモードの実現も可能だ。Appleのアプリのエコシステムの価値向上に直結するハードウェアとして、注目していくべき存在となるはずだ。