皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、老後の備えをまったくしていないことに不安を感じる29歳の主婦の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◆39歳貯金450万。3500万円の家を買って後悔しています老後の備え、何か手軽に始められる投資はありますか?
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、老後の備えをまったくしていないことに不安を感じる29歳の主婦の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

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◇相談者
Kさん(仮名)
女性/専業主婦/29歳
東海/持ち家・一戸建て

◇家族構成
夫(会社員/29歳)、子ども(3歳、1歳)

◇相談内容
老後資金について全然考えていないので、このままで大丈夫なのか不安です。どこか削られる場所があれば節約をがんばっていきたいと思っています。また、今年から上の子は認定こども園の幼稚園部に入れ、下の子は保育園にはいれれば保育園、入れなければ無認可保育園に入れ、私(妻)はパートで働こうと思っているのですが、久しぶりの仕事なので家事と両立できるか不安です。投資についても少し興味がありますが、どのようなものが自分たちに向いているのかわかりません。なにか手軽に始められる投資はありますでしょうか。

◇家計収支データ
相談者「K」さんの家計収支データ

◇家計収支データ補足
(1)ボーナスの使いみち
全額貯蓄

(2)加入保険について
[夫]
逓減定期保険(保険期間50歳、現在の死亡保障1320万円)=保険料2万5262円(年払い)
医療保険(終身保障65歳払込終了、入院5000円)=保険料2万805円(年払い)
[妻]
終身保険(死亡1500万円、60歳払込終了)=保険料3万1083円(年払い)
医療保険(保険期間80歳、入院1万円)=保険料4万5241円(年払い)
がん(終身保障60歳払込、死亡5万円、入院5000円)=保険料1万6779円(年払い)
[子ども]
学資保険(22歳満期、満期金200万円)=保険料19万5224円(年払い・2名分)

(3)住宅ローンについて
・ローン開始年/2017年1月
・借入額/1770万円
・借入年数(返済期間)/30年(期間短縮後)
・金利/全期間固定1.5%(団体信用生命保険加入)
・繰上返済/1回あり・200万円
・・・・・
固定資産税額 10万円

(4)幼稚園、保育園費用について
保育園費用(上の子)=月2万7000円、保育園費用(下の子)=4万4000円(無認可)、8000円(認可)

(5)車両費について
上記データの金額は車検、税金、保険費用等(月割り)も含む。ただし、妻のクルマの保険、税金は親が負担

(6)今後の教育費について
高校までは公立。大学で自宅通学ができない場合、生活費用も負担したいと考えている。

(7)妻の収入について
上の子どもが幼稚園に通っている間は可能な勤務時間は4時間ほど。パート収入としては6万円程度。ただし、資格を持っているため、資格が使える職業であれば10万円程度になる。

◇FP深野康彦からの3つのアドバイス
アドバイス1 時間軸を考えれば、優先すべきは教育資金や住宅ローン
アドバイス2 目的を決めず、貯蓄を増やしていく
アドバイス3 無理のない掛け金で「iDeCo」を始めてもいい

◆アドバイス1 時間軸を考えれば、優先すべきは教育資金や住宅ローン
まず、老後資金についてですが、「全然考えていないので不安」とのこと。結論から言えば、今はまだ考える必要はありません。理由は、時間軸による優先順位を考えれば、教育資金の準備と住宅ローンの完済が優先されるからです。加えて、ご夫婦ともまだ20代。老後は30年以上先のことです。時間はタップリあります。逆に言えば、老後について不確定要素がまだまだ数多くあります。それをすべて想定して備えることは、あまりに大変であり、かつキリがありません。

では、教育資金や住宅ローンに関して、Kさんの家計に何か問題があるかと言えば、現状はさほどありません。教育資金は、学資保険で200万円ずつ。さらに毎月の貯蓄のうち、児童手当分(現在は月2万5000円)を全額、教育資金として貯めることができれば、これもほぼ200万円ずつとなり、大学費用として目安の1人400万円(私立文系の大学にかかる4年間の学費)を備えることができます。住宅ローンも、一度繰上返済をされて、完済はご主人59歳のとき。定年前に払い終えるという点で、ひとまずは安心です。

◆アドバイス2 目的を決めず、貯蓄を増やしていく
ただし、不安材料がないわけではありません。例えば、貯蓄ペースを今後も維持できるかどうかは不確定です。とくに、今後数年間は貯蓄が難しい時期になりそうです。もしも下のお子さんが無認可保育園への入園となれば、上のお子さんが小学校入学まで、2人合わせて月7万1000円の保育園費用が発生します。Kさんがパートで働いたとしても、収入が月6万円なら、それらコストを全額カバーすることはできません。

また、お子さんが中学もしくは高校から私立に入学する可能性も、決してゼロではないはずです。購入した住宅も今後30年、まったく修繕やリフォームが不要というわけにはいきません。ともに別途、まとまった支出が発生するかもしれないということです。

したがって、貯蓄ができない時期は仕方がないと割り切って構いませんので、できる時期は積極的に貯蓄していく。「これは何のため」と決めず、現金が増えていけば、想定外の教育費にも住宅コストにも、そして余れば老後資金にも充てることができます。

家計管理については、目立った無駄はなく、上手に管理されていると思います。しいて言えば、保険の見直しは可能です。Kさんの終身保険は払済保険にして、保険料コストを下げてもいいでしょう。必要な死亡保障は、割安な掛け捨ての定期保険や収入保障保険で確保する。現時点では、死亡保障はあえて必要はないですが、働くようになったら500万~1000万円はあっていいでしょう。

◆アドバイス3 無理のない掛け金で「iDeCo」を始めてもいい
それでも、老後が心配という気持ちは理解できます。そこで、今後のマネープランや家計のあまり負担とならない老後対策を。まずは、具体的な老後資金づくりとして、ご主人名義で「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を始めてもいいと思います。運用益や配当金等が非課税になる他、掛け金が全額、所得控除となります。つまり、確実に所得税、住民税が還付されるということ。これは大きなメリットです。

毎月5000円以上1000円単位で始められて(勤務先に企業年金制度などがない会社員の場合、月2万3000円が上限)、掛け金の金額は年1回変更でき、休止や再開はいつでもできます。掛け金は60歳以降でなくては引き出せませんので、あまりiDeCoにシフトせず、家計の状況で金額等を判断してください。

また、「投資に関心がある」とのことですので、これもiDeCoで可能です。申し込む金融機関が用意している、複数の限られた投資信託から選ぶ形にはなりますが、これから運用を始めるという人にはそれでもいいでしょう。積み立てによる購入で、結果的に長期投資になることもリスクの軽減につながります。ただし、利用には手数料等のコストが発生します。金融機関によってその金額が異なりますので、事前に調べておくといいでしょう。

また、夫婦の働き方もまた老後対策となります。元気に65歳、70歳と長く働けば、それだけ手持ちの老後資金の目減りを抑えます。さらに、もしKさんが今後、パートではなくフルタイム勤務=正社員を目指せば、収入アップはもちろんのこと、厚生年金に加入するわけですから、受け取る公的年金の受給額も増えます。これもまた立派な老後対策なのです。

◆相談者「K」さんから寄せられた感想
アドバイスありがとうございました。先生からの的確な指示をいただき、ほっとしました。イデコについては、調べてよさそうなら少額で始めていきたいと思います。この世の中なにが起こるかわからないので、私もがんばって働きたいと思います。本当にありがとうございました。

教えてくれたのは……深野 康彦さん

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武

文=あるじゃん 編集部