発注者と打ち合わせする様子

街を歩いていると道路工事などの土木施工現場を見る機会があると思います。そんな現場の管理者として、安全な施工のために指揮をとる人を「土木施工管理技士」といいます。今回は佐藤工業株式会社名古屋支店で働く米田咲さんに、仕事のやりがいやこの仕事についた経緯について教えていただきました。

■土木施工管理技士は安全や品質、工程や原価を管理する仕事

Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。
 
私は現在、発電所内の護岸(水ぎわの浸食防止のための構造物)補強・耐震補強チームに所属しています。一般の方は発電所というと大きな機械や設備がある場所をイメージするかと思いますが、それらの設備の下には、土木技術者たちが整備した何十メートルもの支柱があるのです。

土木の専門家が揃う現場で、私は土木施工管理技士として働いています。施工管理とは、工事における安全や品質、工程、そして原価を管理する仕事です。土木施工管理技士として施工に必要な資材を発注したり、よりスムーズに施工が進むような手順を考えたりしています。また、資材の中にはレンタルしている道具もあります。その資材を紛失したり、過剰に資材を使用したりすると無駄なコストがかかってしまいますので、そうした道具の管理も原価管理の一環として行っています。

<一日のスケジュール>
08:00 朝礼、ラジオ体操
08:30 現場業務(現場巡回、測量、出来形※・品質・安全管理)
12:00 昼休み
13:00 協力会社との作業打合せ(進行状況確認、翌日作業確認)
13:30 事務所内業務(日報作成)
14:00 現場業務
17:00 事務所内業務(工程表作成、出来形書類作成、写真整理)

※出来形…工事が完了した部分が目的通りにできているか検査すること
 
 
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
 
私たちが作る基盤は、新しい建造物を建てるためには必要不可欠です。今作っている基盤の上に大きな機械や設備が設置されていくのだと思うと、この社会の形成を支えているのは土木技術者なのではないかと感じるほどです。社会の基盤を作っているというスケールの大きさがこの仕事の魅力です。
 
 
Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?
 
施工の段取りがうまくいかなかったときはつらくなりますね。職人さんの作業の手順や、機材の配置を変えていればもっとスムーズかつ安全に施工ができたのでは……と振り返っては後悔することも少なくありません。

また、現場の職人さんとお話するときは苦労します。私は現場を管理する立場ですので、職人さんたちの動きにも注意を払っています。進行に間違いがあった際などはきちんと指摘しなければいけないのですが、職人さんはこだわりが強い方が多く、理解してもらうのは大変なのです。そのため、普段からコミュニケーションを取って人間関係を築くようにしています。

■ゼミの発表会での経験が、現場のコミュニケーションに役立っている

Q4. どのようなきっかけ・経緯で土木施工管理技士の仕事に就きましたか?
 
私は幼い頃から社会貢献につながる仕事に漠然とした憧れがあり、大学では水環境の研究をしていました。その後、就職活動を機により多くの業界を知りたいと思い、分野を問わずさまざまな会社に足を運ぶ中で土木施工会社に勤める土木技術者の方と話し、社会の基盤を作る土木の業界に魅力を感じたのです。
 
 
Q5. 大学では何を学びましたか?
 
大学ではサステナブル(持続可能な)社会の構築を目指す水代謝システム研究室に入り、水処理に関するプロセスの確立を研究していました。

大学での学びが今の仕事に生かされていると感じるのは、ゼミの発表会のときに人前で話した経験です。先ほどもお話したように、土木施工管理技士は職人さんと会話する機会が多くあります。自身の意見を伝えるには順序を立てる必要があるということは、ゼミの発表会を通して学びましたね。
 
 
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
 
幼い頃からよく見かけていた国際交流センターのポスターが印象深く、高校生の時は国際ボランティア(青年海外協力隊)に憧れていました。しかし説明会に参加したところ、専門的な知識・経験を積まなければ参加は難しいと言われてしまったのです。

その後、偶然にも地元のボランティア団体がバングラデシュで活動するNGOの見学ツアーを開催することになり、すぐに参加を決め2週間バングラデシュに滞在しました。滞在期間の内10日間はガザ地区という田舎へホームステイしたのですが、日本との生活環境の違いに衝撃を受けました。バングラデシュは発展途上国であり、産業技術は少しずつ発達しつつあります。しかし、国民の環境に対する意識に変化がなかったため、生活資源である川へ廃棄物を流していたのです。ゴミが浮かぶ川で洗濯をするバングラデシュの人々を見て、社会貢献したいという意識がより強くなりました。このときの経験が進路にも影響し、「途上国のこれからの発展貢献に努める」という言葉を掲げる大学への進学を決めました。

現在は発展途上国の支援に直接つながる業務をしているわけではありません。しかし現在勤める会社は海外の工事に積極的なので、「いつか海外の工事に携わることができるかも……」という思いが仕事へのモチベーションにつながっています。

■高校生のうちに思い切った行動をしてみると視野が広がる

Q7. どういう人が土木施工管理技士に向いていると思いますか?
 
チームプレーが好きな人は向いていると思います。土木施工は一人だけでは決して進められません。お客様や職人さん、資材の取り扱い会社の方といった多くの人の力があるからこそ建造物を作ることができるのです。適切なコミュニケーションを取って、現場を正しく管理できる能力が必要です。

また、人間観察が得意な人も向いているのではないでしょうか。職人さんごとの性格や考え方を把握すると、各個人に合わせた説明の仕方ができるようになると思います。
 
 
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
 
私が高校生の頃を振り返ってみると、行動力があったからこそバングラデシュでの滞在などの貴重な経験を積めたのだと思います。経験を積むことで視野も広がるはずなので、高校生の間はさまざまなものに関心を持って、積極的に挑戦してみてください。
 
 
土木の技術は道路や河川といった場所に限らず、建造物の基盤を作る上で必要不可欠なものなのですね。米田さんが語るように、「この社会を支えている」と言っても過言ではありません。スケールの大きなものを作りたいという方は進路の選択肢の一つに土木施工管理技士を加えてみてはいかがでしょうか。
 
 
【profile】佐藤工業株式会社 名古屋支店 土木事業部 碧南火力作業所 米田咲
【取材協力】一般社団法人 土木技術者女性の会
http://www.womencivilengineers.com
女性技術者の質の向上と活動しやすい環境づくりを目指しています。幅広く活動を行うため、学生の皆さんは無料で会員になれる仕組みにしています。