2017年、AppleはiPhone 10周年を記念し、主力スマートフォンのiPhoneに3モデルを追加した。このうち、2017年11月3日に発売したiPhone Xは、既存のiPhoneからデザインやテクノロジー面で大きな変更が加えられ、次世代に向けたコンセプトモデルと位置づけられた。

現在のラインアップは2015年モデルでA9プロセッサを搭載するiPhone 6sシリーズ、同じくA9を搭載するiPhone SE、2016年モデルでA10 FusionのiPhone 7シリーズ、2017年モデルでA11 Bionicを搭載するiPhone 8シリーズ、iPhone Xとなっている。

iPhone 6sシリーズ、iPhone 7シリーズといった過去のモデルは、発売から2年はラインアップに残される法則ができつつある。よって、2018年9月に新たなiPhoneが発売されたら、iPhone 6sシリーズが姿を消し、iPhone 7シリーズとiPhone 8シリーズが、最新のiPhoneと併売されることになるだろう。

ここで問題となるのがiPhone SEだ。

  • iPhone SE

iPhone SEは2016年3月に、A9プロセッサを搭載する4インチの廉価版iPhoneとして登場した。329ドルからという価格の安さから新興国でのiPhone販売の主力となっているだけでなく、先進国市場でもより小型のiPhoneを求めるユーザーから支持を集めている。割引販売なしでも他のiPhoneより価格が抑えられていることから、日本でも格安SIMとの組み合わせでの展開が幅を利かせている。

iPhone SEが搭載するA9プロセッサは、最新のiOS 11の体験を余すことなく楽しむ上での「最低ライン」に位置している。iOS 11で拡張現実アプリを実現するARKitは、A9以降のプロセッサを搭載するiPhone/iPadで利用できるからだ。最も価格が安く新品として販売されるiPhone SEの性能に合わせて、ARKitはチューニングされた、と見ることもできよう。

  • ARKitはiPhone SEの性能に合わせてチューニングされたのかも?

Appleが今後、ARKitをより高度なものにし、グラフィックスをふんだんに盛りこんだ新しい体験をアプリ開発者に提案していくなら、現在の最低ラインに位置するiPhone SEの性能を引き上げていかなければならなくなるだろう。2018年にiPhone SEを刷新するなら、プロセッサ性能の向上に取り組むのは間違いない。これに加えて、「iPhone X化」という魅力も盛りこむかもしれない。

2016年3月、iPhone SEの登場で驚いたのは、前年9月に発売したiPhone 6sと同じA9プロセッサを搭載したことだった。廉価版のiPhoneに最新のiPhoneと同じプロセッサや1,200万画素カメラを設定したことは、今振り返ればiOS 11のARKitまでのラインアップ展開を構想していたからだと分かる。しかし当時は、贅沢な仕様だと思わざるを得なかった。そして、途中で記憶容量の増加はあったが、それ以外は発売当初のままの仕様で販売が続けられて、間もなく2年がたとうとしている。

そのことから考えると、2018年にiPhone SEが刷新されるなら、A10 Fusionよりも、A11 Bionicを搭載する方がよいのではないだろうか。A11 Bionicは、4コアの効率コアと2コアのパフォーマンスコアの6コア構成で、低消費電力時の処理性能がA10 Fusionよりも7割向上している。また独自の3コアグラフィックス、機械学習処理、画像処理エンジンなどが搭載され、今後登場する高度なアプリの実行にも対応する。

これまでのように、むこう2年間、2018年モデルの新しいiPhone SEを維持するのであれば、現在のiPhone 8やiPhone Xの併売期間の最後のシーズンになるまでその性能が有効であることが望ましく、A10 FusionよりA11 Bionicを搭載する方が適していると断言できる。