風邪を引いたとき、黄色い鼻水が出た経験がある人もいるのではないだろうか。実はあの黄色い鼻水は蓄膿症を引き起こす膿(うみ)の正体で、鼻づまりを長い間放置しておくと顔が重くなり、時には痛みが生じる蓄膿症になる可能性もある。今回は慶應義塾大学病院の耳鼻咽喉科・神崎晶医師に蓄膿症について話をうかがった。

蓄膿症の正式名称は副鼻腔炎

蓄膿症は読んで字のごとく、膿を蓄積させてしまうことを意味し、医学的な正式名称は「副鼻腔炎」と呼ばれる。

「副鼻腔は、鼻の穴の奥あたりにある『鼻腔』の横にある空洞のことです。鼻の左右横、目の下あたりは骨の中が空洞となっており、目の内側や眼球の裏側、額の部分など目の周りはすべて空洞になっています。 どうしてなのかはわかっていませんが、哺乳類はすべて同じ場所に空洞があるんです」

この副鼻腔の空洞の中に膿がたまってしまうのが副鼻腔炎の症状だ。風邪を引くと多くの人が黄色い鼻水を出すが、これは急性の副鼻腔炎で、鼻水が止まらずに炎症が残ると慢性の副鼻腔炎になるという。

  • 鼻腔と副鼻腔の位置関係

副鼻腔に膿がたまる理由

慢性の副鼻腔炎が通称で蓄膿症と呼ばれるものであるが、症状として診断される際の基準は「3カ月以上、膿をためていること」。診察では、風邪を引いて黄色い鼻水が出始めたのはいつごろかを確認しながら、時期的な目途を立て蓄膿症だと判断するそうだ。

では、なぜ膿がたまってしまうのだろうか。

「副鼻腔には、膿などの汚れたものを外に出す、毛の生えた細胞(繊毛細胞)があります。この細胞が老廃物をかき出すように働いてくれるため、膿は副鼻腔にたまらずに鼻水として外に出ていってくれます。しかし、風邪やアレルギー性鼻炎などで炎症が起きると、鼻の中の粘膜が腫れてしまいます。 粘膜が腫れることで副鼻腔に膿が入る出入り口がふさがってしまうのです」と神崎医師は話す。

膿が副鼻腔にたまるときは重力に従った流れなのだが、出るときは重力に反した動きで出口に向かわなくてはなならい。 その道がふさがってしまえば、繊毛細胞がどんなに一生懸命に働いたとしても膿をかきだせないため、ずっと膿がたまってしまうというわけだ。