NPO団体「Factum Foundation for Digital Technology in Conservation」と「Factum Arte」は3Dスキャニングをはじめとした非接触技術による記録や3Dプリンタによる出力、セメントを用いた彫刻から高度なクラフト手法による油絵まで文化遺産や歴史的に価値あるオブジェクトの保全を行っている。

FACTUM arte

FACTUM arte](http://www.factum-arte.com/)

公式サイトのひとつFACTUM arteでは、ビューワーを用いてそれら保全オブジェクトを高解像度な写真で閲覧できるコーナーも設置してあるが、じつに不思議な青銅器時代のスコットランドの岩肌に刻まれたリング「Cochno Stone」(FACTUM arte内Webページ)やビューワー操作によりX線によるまったく別の下絵が浮かび上がる19世紀オランダ画家の油絵「Chrysanthemums in a Green Vase」(FACTUM arte内Webページ)など、Webでもその一端が垣間みえる。先端技術と積み重ねられた大変な労力を経て、こうした歴史的なオブジェクトがWebで閲覧できるようになっている。

  • スコットランドの岩肌に刻まれたリング「Cochno Stone」(FACTUM arte内Webページより)

    スコットランドの岩肌に刻まれたリング「Cochno Stone」(FACTUM arte内Webページより)

  • 19世紀オランダ画家の油絵「Chrysanthemums in a Green Vase」(FACTUM arte内Webページより)

    19世紀オランダ画家の油絵「Chrysanthemums in a Green Vase」(FACTUM arte内Webページより)

  • XRAYを選択するとX線での下絵が表示される(FACTUM arte内Webページより)

    XRAYを選択するとX線での下絵が表示される(FACTUM arte内Webページより)

キヤノンは、グループ会社であるOcé Technologies B.V.(本社:オランダ、以下オセ社)の持つ隆起印刷技術があらたにこの両者の活動に貢献していることを報告している。新たな取り組みは古代エジプト文化遺産の復元だ。古代エジプト第19王朝の王セティ1世のお墓の一部を復元する試みは、棺のほか荘厳とした壁や柱までを再現。撮影した3Dデータをもとにキヤノングループ企業オセ社と共同で制作、最大15mmの厚さを持つ浮き彫りを同社の隆起印刷技術で実現している。

  • 復元されたレリーフが施された壁や柱(同社資料より)

    復元されたレリーフが施された壁や柱(同社資料より)

  • 復元された棺|(同社資料より)

    復元された棺(同社資料より)

1877年にまで遡る起源を持つ老舗企業のオセ社は、バターやマーガリンのカラーリングマシーンの製造にはじまり、ジアゾーコーティング(diazo coating)の発明など古くからイノベーションを実践してきたオランダの企業で、2010年にキヤノングループの一員となっている。"質感情報"を使った隆起印刷技術は、いままでの紙にあらたな価値を与えてくれる。同社は、これまでにもゴッホやフェルメールなどオランダの偉大な画家の作品の複製や視覚障がい者向けの地図や点字表示など培った技術を用いた社会文化支援活動を継続的に行っている。