BEC819系の車体や車内設備は、この817系電車を基本としている

JR九州は、車両に搭載した蓄電池の電力でも走行できる電車「BEC-819系」の営業運転を、2016年10月より、筑豊本線(若松線)折尾〜若松間で開始した。続いて、2017年3月4日のダイヤ改正からBEC-819系の増備車も投入して、同区間の列車をすべて蓄電池式電車に置き換えた。

BEC-819系の愛称は「DENCHA」である。「DUAL ENERGY CHARGE TRAIN」の頭文字を取ったものだ。

蓄電池式電車とは、一般的な電車と同じく架線から取り入れた電力で走れるのはもちろん、搭載した蓄電池に充電した電力でも走ることができる鉄道車両だ。それゆえ、折尾〜若松間のように架線がない(非電化)区間でも運用できる。急速充電可能かつ大容量の蓄電池が開発されたことによって、実現した方式の電車で、BEC-819系は、世界で初めての交流電化区間用の蓄電池式電車でもある。

  • 左:折尾駅に停車中のBEC819系。電化区間に入るとパンタグラフを上げて、通常の電車として走行する。右:蓄電池を使い、架線がない非電化区間を走るBEC819系。パンタグラフは折り畳まれている

BEC819系の床下に搭載された蓄電池

蓄電池への充電は、電化区間で架線からパンタグラフを通じて行うのみならず、回生ブレーキ時に発生した電力でも可能である。非電化区間でもブレーキを使用すると充電が行われ、消費した電力を補える。

なお、回生ブレーキとは、モーターと発電機が同じ構造の装置であることを利用し、回路の組み替えによってモーターで発電を行い、その際の抵抗力をブレーキとするシステム。通常は、発生した電力は架線に戻され(回生)、他の電車が利用できる。省エネ性能が非常にすぐれており、現在では、あらゆる種類の電車において一般的に採用されている。

JR東日本も「JR九州タイプ」を導入

JR東日本も2017年3月4日より、奥羽本線・男鹿線の秋田〜男鹿間に、蓄電池式電車「EV-E801系」を投入。営業運転を始めた。

このEV-E801系は、実はJR九州のBEC-819系の設計を流用し、寒冷地向けに耐寒耐雪設備などを付加した電車。塗色が違うので気づかれにくいが、車体デザインがほぼ同じなのが、その証拠である。

JR東日本はこれに先だって、2014年3月より東北本線・烏山線の宇都宮〜烏山間で、やはり蓄電池式のEV-E301系の営業運転を始めている。終点の烏山には、充電設備も新設された。

ただ、この車両は電気系統が直流電化区間向けであり、東北地方の交流電化区間には対応できない。そこで、新たに独自開発を行うより、JR九州が開発を進めている交流電化区間向けのBEC-819系をカスタマイズする方が有利と判断したのであった。