iPhone Xに搭載した顔認証機能「Face ID」。この技術は、Appleのセキュリティシステムを、他社よりも3年進めたという評価も聞かれるようになった。KGI SecuritiesのアナリストMing-Chi Kuo氏は、2018年のiPhone全モデルの他、iPad ProやMacBook ProなどのTouch ID搭載デバイスに対しても、Face IDを搭載していく可能性を指摘している。Appleがこれまで、なんらかの規格や方式を変更するときは一気に切り替えてきたし、TrueDepthカメラシステムの量産効果を求めるなら、実に自然な流れ、といえる。

  • iPhone Xが搭載するTrueDepthカメラ。新たな要素は、左端の赤外線カメラと、右端のドットプロジェクターにある

iPhone XのFace IDについては昨年9月のスペシャルイベントで、逸早くその機能を試すことができた。その様子はビデオにまとめてあるが、非常に素早い登録作業と認証を確認して頂きたい。

iPhone X: Face ID, Selfie Portrait with Portrait lighting, Animoji Demo

AppleのCDO、Jony Ive氏は、登壇したThe New Yorker TechFest 2017で、Face IDの技術について5年前から取り組みを始めていたと明かした。そこでは、より大きなプロトタイプで試しており、99%は上手くいかず、失敗の連続だったと振り返っている。そのプロセスが重要で、完成するまでの経緯が記憶に残っているとも語っていた。5年前というと2012年の話で、iPhone 5が発売された年だ。iPhoneに生体認証を採用したのは2013年のiPhone 5sからであり、指紋認証技術を搭載する以前から、顔面認証技術に取り組んでいたことが分かる。

Face IDの仕組みについては、iPhone X発表のプレゼンテーションとともに、Appleが用意したウェブページが参考になる。

  • TrueDepthカメラは、3万点以上のドットを照射し、これを赤外線カメラで読み取ることで、顔面の正確なモデル化を行う仕組み

TrueDepthカメラは3万点以上のドットを顔に照射し、これを赤外線カメラで読み取る仕組みになっている。ちなみにこの光は弱いため、目や肌に影響がないとしている。読み取った画像から深度マップを作成し、顔の正確なデータと赤外線データを取り込む。これらをA11 Bionicによって数学的モデルに変換し、そのモデルと照合することで認証を行うという機構だ。モデルデータは、A11 BionicのSecure Enclaveに暗号化して格納される。

もしメイクやメガネ、帽子、ひげなどに変化が合った場合でも、自動的に認識できるが、顔全体にひげが生えた場合などは、パスコードでの認証を求め、モデルデータを学習させる仕組みも備えている。