2017年は今後、自動車の歴史を考える上で“転換点”として思い出される年となるかもしれない。欧州では政府による“エンジン車販売禁止”宣言が相次ぎ、世界的には多くの自動車メーカーが電動化対応の姿勢を鮮明にした。クルマの動力源は今後、どう変わっていくのだろうか。

  • 日産「リーフ」の画像

    2017年に登場した日産自動車の電気自動車「リーフ」(2代目)

EVシフトは今に始まったことではない

1990年代に、一時的に電気自動車(EV)への移行が強く推し進められようとしたことがあった。背景にあったのは、米国カリフォルニア州で始まった低公害車・低公害燃料プログラムの法律、一般的にZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)法といわれる規制への対応である。

当時のZEV規制の内容は、カリフォルニア州内で販売する新車のうち、2%を排ガスの全く出ないクルマにしなければならないというものであった。この規制はまた、現在も同様だが年を追って規制値が厳しくなり、当時でも2001年には5%、2003年には10%を排ガスゼロのクルマの販売にしなければならないことになっていた。

とはいえ、当時はまだバッテリー性能が追いつかず、厳密な施行ができなかったため、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)も、係数をのせることでZEVに準ずる車種として認めてきた。その結果、EVへの熱は一時的に下がった。

  • フォルクスワーゲン「e-GOLF」

    フォルクスワーゲンからはゴルフのEV「e-GOLF」が日本に上陸

政府がEV普及を後押しする事態に

しかしながら、それ以後も世界的に気候変動が進み、同時に大気汚染が深刻化してきたことから、2017年7月にはフランスが、2040年までにエンジン車の販売を禁止すると発表した。続いて英国も、2040年からエンジン車の新規販売を禁止すると発表する事態となった。これより以前にドイツ議会は、10年前倒しとなる2030年にエンジン車の販売を禁止すると議決している。

この流れはインドへも広がって、2030年までにエンジン車の販売を禁止するとともに、販売できるのはEVのみという具体的な方針を打ち出した。こうした動きは、世界最大の自動車市場である中国へも広がり、将来的にエンジン車の販売を禁止すると政府関係者が口にしている。中国では、法規制とは別にEV以外のエンジン車はナンバー交付に高額な手数料が掛かったり、ナンバー交付に何カ月も待たされたりということが、現実の問題となっている。したがって、実質上のエンジン車規制がすでに始まっているともいえるのである。