2017年も終わりに近づき、大掃除を計画している人も多いはず。「ママの仕事」と気負わずに、家族の力を上手に借りてみませんか? 今回は『子どもと一緒に身につける! ラクして時短の「そうじワザ」76』(小学館)を上梓したカリスマ清掃員・新津春子さんにインタビュー。親子で取り組むことで、子どもが掃除好きになるテクニックを伝授してもらいました。

新津春子さん


1970年、中国・瀋陽生まれ。羽田空港などの清掃を受け持つ日本空港テクノの社員。2013年、2014年、2016年、2017年に、羽田空港が「世界一清潔な空港」(英スカイトラックス社のワールド・エアポート・アワーズ)に選ばれたときの立役者のひとり。『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)など数々のテレビ番組で活躍ぶりが取り上げられている。

掃除を通して人への思いやりを学んでほしい

――新津さんは掃除についての本をたくさん出されています。今回は、どうして子ども向けの本を出そうと思われたのですか?

子どもの時に教わったものって、大人になってもすごく身に付いているものじゃない? だから子どものうちに、掃除を通して、人に対する思いやりや優しさを学んでもらいたいと思ってこの本を書きました。

――具体的には、どういうことですか?

「他人が使うところだから、私は知らない」ではなくて、「他人が使うんだから、きれいにするんだ」っていう人への優しい気持ちがあったうえで掃除ができれば、将来どんな仕事についても、どんな生き方をしても、人に対する思いやりが生まれると思うの。それを学んでもらいたいんです。

それから、将来一人暮らしを始めたときも、結婚して子どもができたときも、困らない掃除法をこの本を通して身に付けてもらいたいとも思っています。

例えば、学校で教わった掃除の仕方で今役立っているものってどれくらいあるでしょうか。教室みたいに広いスペースをバーッと走ってぞうきんがけすることって、家庭ではなかなかないですよね?

昔と違って、今は床の素材一つとっても木材だけではなくなっているし、家の中の設備も複雑になり、細かい隙間やデコボコした部分を掃除することも増えてきています。時代が変わっているのだから、掃除のやり方も時代に合わせて変えた方がいいし、効率の良い掃除方法を学校で学べたらすごくいいと思うのね。だから、学校で先生たちがどうやって掃除の仕方を教えたらいいかも、この本には書きました。

  • 「人に対する思いやりを掃除から学んでもらいたい」と語る新津さん

――自分自身も掃除がちゃんとできていないのに、子どもに教えられるのか不安です……

子どもと一緒にやればいいのよ! 一緒に掃除の仕方を学んで「ママもできないから一緒にやろう」ってなったら、子どもは「ママより早くできるかな?」ってやる気になるかもしれない。でも、「ママは当然、掃除ができる」って思われたら、ママ自身も苦しいし、「ママはできるけど、僕はできない」って子どもが諦めてしまうかもしれない。

――子どもの可能性を狭めてしまうかもしれないってことですね

大人でもそうじゃない? 私もカリスマ清掃員と呼ばれていたって、できないことがある。掃除を教えている生徒から教わったこともたくさんある。「どうしたらきれいになるかな、一緒に考えよう」って声を掛けることが、人を育てるのではないかしら。

大事なのは「きれいにできた」をほめるタイミング

――子どもが掃除に取り組むようになるコツみたいなものはありますか?

自分の机だったら、自分の机だけ。掃除用具はタオルだけ。子どもが集中できるように、飽きないように、掃除する場所と掃除道具を1つに決めるといいと思います。

そして掃除が終わったら、必ずママがチェックしましょう。例えば机の掃除だったら、「表面だけではなく机の下や側面は拭けているか」「線が残っていたり、拭き残しがあったりしないか」などを確認するの。ママがチェックしに来るって思ったら、子どもは「ちゃんとやらなくちゃ」って思うし、できるようになってきたら"何時まで"と時間を決めてゲームみたいに楽しむこともできると思う。

そしてきれいにできたら、ほめること。子どもって自分ができたことは「ママ見て」って呼んでくるじゃない。見てほしいのよ。ほめてくれるのがうれしいの。それが「忙しいから後でね」という状態がずっと続くと、子どもは掃除をしなくなる。掃除が終わったらすぐにチェックしてほめる。タイミングが大事です。

「ぞうきん」ではなく「フェイスタオル1枚」から始めよう

――小さい子どもはまず、どんな掃除から始めるのがいいでしょうか?

部屋の中を拭いて、きれいにすることから始めるといいと思います。そんなとき便利なのが、ぞうきんではなく、フェイスタオルです。清掃業界のプロはみんな使っています。

ぞうきんは、一回拭いたらすぐに汚くなって何度も洗う必要があるし、厚みのあるところはカビも生えやすい。でもフェイスタオルは、8つ折りにすると手のひらサイズになって、拭き面が16面もできます。さらに素材が薄いのでカビも生えにくく、細く狭い場所も掃除しやすいんです。ぜひ、試してみてください。

  • フェイスタオルを準備

  • 8つ折りにすると便利に使えます

次ページからは、ママの日々の掃除を楽にする方法や家族で行う大掃除の意義についてお話しいただきます。