12月12日と13日の2日間にわたって、NVIDIAが技術者向けイベント「GTC Japan 2017」を開催した。GTC Japanは、日本最大のGPUテクノロジーイベントであり、多くの講演やワークショップ、展示などが行われた。ここでは、その中でも最も注目すべき講演である、ジェンスン・ファンCEOによる基調講演の様子をレポートする。

  • NVIDIA創業者兼CEOのジェンスン・ファン氏

    「新しいコンピューティングの時代」と題した基調講演を行った、NVIDIA創業者兼CEOのジェンスン・ファン氏

ジェンスン氏の基調講演は2日目に行われたが、一番広い会場もあっという間に満席になり、立ち見がでるほどの盛況となった。基調講演のタイトルは「新しいコンピューティングの時代」であり、その要旨は以下の通りだ。

仮想世界で物理法則に基づいたコラボを提供「NVIDIA Holodeck」

この5年間で、GPUの性能は10~50倍に向上し、世代はKeplerからVoltaへと3世代進化している。また、NVIDIAのGPUを活用する500以上ものアプリケーションやツールが登場している。

  • NVIDIA GPUは5年間で最大50倍の性能向上

    NVIDIAのGPUコンピューティングは躍進を遂げ、5年間で性能は10~50倍に向上し、世代はKeplerからVoltaへと3世代進化した

NVIDIAは、コンピューターグラフィックスの長年の夢であるバーチャルリアリティ(VR)を実現した。何かが創造される世界をフォトリアリスティックに、物理学の法則に従いながら、距離を超えてどこにいても多人数が同時に分かち合うことができる。これがNVIDIAの新技術「NVIDIA Holodeck」である。

  • NVIDIA Holodeckは仮想空間内でのチームコラボレーションが可能

    NVIDIA Holodeckは、未来のデザインラボであり、仮想空間内でのチームコラボレーションが可能だ

  • NVIDIA Holodeckのデモ。このように仮想空間内で複数人が身振りを交えたコミュニケーションをとることができる

基調講演の中で、3人の人間がHolodeckで、コミュニケーションを行うデモや車のボンネットの中からエンジンをとりだし、その部品をバラバラにして確認することなどのデモが行われた。

  • NVIDIA Holodeckのデモ

    NVIDIA Holodeckのデモ。車のボンネットの中にあるエンジンを取り出して、みんなで見ている様子

Holodeckはまだ開発途中であるが、アーリーアクセスでの提供が開始されている。Holodeckは、CATIAやCreoなどの3D CADで3DモデルをMayaや3dsMAXでレンダリングしたものを、そのまま利用できるようになっているため、さまざまなアプリケーションが考えられる。SFのような世界がもうすぐ実現されるのだ。

  • NVIDIA Holodeckの制作フロー

    NVIDIA Holodeckの制作フロー。CATIAやCreoなどの3D CADで作成した3DモデルをMayaや3dsMAXでレンダリングして利用できる

  • 125TFLOPSの演算性能を持つVoltaなどが2017年に投入された

    2017年は、125TFLOPSの演算性能を持つVoltaが登場。また、初の1PF AIスーパーコンピューター「DGX」と「DGX Station」も、多くのクラウドやサーバーベンダーに採用された

1PFを実現したAIスーパーコンピューター「DGX」「DGX Station」

また、NVIDIAは2017年に125TFLOPSの演算性能を持つVoltaを発表。初の1PF AIスーパーコンピューター「DGX」と「DGX Station」も投入し、多くのクラウドやサーバーベンダーに採用された。

  • Tesla V100を手にするジェンスン氏

    Voltaベースのアクセラレータ「Tesla V100」を手にするジェンスン氏

  • TITAN Vを手にするジェンスン氏

    Voltaベースのグラフィックスカード「TITAN V」を手にするジェンスン氏

  • NVIDIA TensorRT 3はResNet-50を40倍高速化、OpenNMTを140倍高速化する

    「NVIDIA TensorRT 3」は、プログラマブル推論アクセラレータであり、ResNet-50を40倍高速化、OpenNMTを140倍高速化する

さらに9月に発表した「TensorRT 3」は、プログラマブルな推論アクセラレータで、ディープラーニングの推論を数十倍高速化する。DGXとTensorRTにより、データセンターのTCOは10倍改善されるという。

  • TensorRTは、データセンターのTCOを10倍改善する

    TensorRTは、データセンターのTCOを10倍改善する。これはTensorRT導入前のイメージ。160CPUを搭載したサーバーで、45000画像/秒の処理が可能。消費電力は65KWである

ラック4本を占有する160個のCPUを搭載したサーバーの処理能力と同じ処理能力を、Tesla V100 GPUを8基搭載したNVIDIA HGX1台で実現可能であり、コストは6分の1、消費電力は20分の1になるほか、4本のラックが1つのボックスで済むので設置スペースも大幅に削減できるとアピールする。

  • Tesla V100 GPUを8基搭載したNVIDIA HGX1台があれば、160CPUと同じ45000画像/秒の処理をわずか3kWで行うことができる

    しかし、Tesla V100 GPUを8基搭載したNVIDIA HGX1台があれば、160CPUと同じ45000画像/秒の処理をわずか3kWで行うことができる

  • SkylakeでTensorFlowを実行し、花の識別を行わせるデモ

    SkylakeでTensorFlowを実行し、花の識別を行わせるデモ。1秒間で4.7枚の画像を識別できる

2017年は、125TFLOPSの演算性能を持つVoltaが登場。また、初の1PF AIスーパーコンピューター「DGX」と「DGX Station」も、多くのクラウドやサーバーベンダーに採用された