風邪のときの注射・点滴の成分はどんなもので、どれくらいの効果が見込めるのでしょうか?

◆そもそも「風邪」とは……
肺に出入りする空気の通り道を気道といいます。そのうち、鼻や口から声帯までが上気道、その奥の気管支が下気道です。この上気道の感染による炎症性の病気を「風邪」、医学的には「風邪症候群」といいます。下気道の炎症は「気管支炎」、さらに気管支の奥にある肺の炎症は「肺炎」です。

風邪症状は上気道だけでなく下気道まで広がっていることが多く、最近では下気道にまで広がって急性炎症をきたす疾患を総称して「風邪症候群」という病名が使われています。

上気道の炎症を起こす風邪の主原因はウイルスです。ウイルスは体内の免疫の力で治療できます。残念ながら、ウイルスには細菌に効果がある抗生物質は効きません。ただし、風邪の大部分は免疫力で治癒することができるので、過度の心配は不要です。

◆風邪治療に使われる注射・点滴の種類・成分・効果
「風邪を早く治したい!」と、風邪で来院されて注射を希望される患者さんは少なくありません。「風邪をひいたけど、注射をしたらすぐに良くなった」と感じる方も多いのかもしれません。では、風邪の注射とはどのようなものでしょう? 風邪の注射・点滴の種類は、大きく分けて4つに分類することができます。

・風邪に対しての抗生物質の点滴
・風邪に対しての栄養剤の点滴
・風邪に対しての解熱剤の注射
・風邪に対してのビタミンの点滴


順に見てみましょう。

1. 風邪に対しての抗生物質の点滴
最初に述べたように、ウイルス感染には抗生物質は効きません。風邪の大部分はウイルス感染なので、風邪に抗生物質の点滴をしても効果はありません。

細菌による二次感染を起こしている場合には、抗生物質は効果があります。重篤な感染でなければ、抗生物質は飲み薬でも十分効果的ですが、重篤な細菌感染による肺炎などを併発している場合には、抗生物質の点滴を行います。

2. 風邪に対しての栄養剤の点滴
点滴内には、カロリーのもとになるブドウ糖やナトリウムなどの電解質が含まれています。一般的に、点滴内のブドウ糖は、血管炎や血管痛が起きにくい5~10%ぐらいの濃度となっています。カロリーは、点滴量500mlでブドウ糖5%濃度だと100キロカロリー、点滴量500mlでブドウ糖10%濃度だと200キロカロリーになります。

スポーツドリンク、例えばポカリスエットだと、500mlで135キロカロリーありますので点滴と同じぐらいのカロリーが期待できます。嘔吐・下痢や食欲不振などで、飲水ができない場合には点滴が効果的です。

3. 風邪に対しての解熱剤の注射
解熱剤の注射は、最近ではほとんど使用されなくなりました。というのも、解熱剤の注射は副作用の危険性が高いからです。

例えば、以前よく使われていた解熱鎮痛剤の注射であるメチロンを例にすると、メチロンは、「ショック、血圧低下、脈拍異常などの重篤な副作用が発現することがある」とされています。適応は、「他の解熱薬等では効果が期待できないか、あるいは他の解熱薬の投与が不可能な場合の緊急解熱」となっており、内服薬など他に解熱する方法があれば用いません。

そもそも、発熱自体は体の自然な反応であり、免疫力を上げるという観点からは熱が高い方がいいとされています。熱による症状が強くなければ、無理に下げる必要はありません。熱を下げるにしても、わざわざ注射で痛い思いをしないでも、飲み薬で十分効果があります。

4. 風邪に対してのビタミンの点滴
残念ながら、ビタミンの点滴が風邪に効くという医学的根拠は現時点では明らかではありません。また、ビタミンの点滴を風邪症状で用いることは健康保険では認められていません。

以上のような理由で、現在、風邪症状に対して注射や点滴を行う医療機関は少なくなっています。風邪の注射・点滴はプラセボ効果としては効果があるかもしれませんが、期待するほどの効果はなさそうです。

◆風邪を治す効果的な方法とは……結局、安静が第一
風邪で処方される薬は、鼻水や咳など、風邪の諸症状を抑えるものです。残念ながら、風邪に対する特効薬はありません。風邪を治すもっとも効果的な方法は、安静にして免疫力を高め、水分や栄養を十分にとることといえるでしょう。

ただし、抵抗力が弱い人や高齢者は、風邪をこじらせて肺炎になることがあります。熱がなかなか下がらない、咳が止まらない、元気がなくぐったりしている、などの症状がある場合は、早めに近くの医療機関を受診しましょう。

文=今村 甲彦