出演を決めた心境の変化について三浦は、「あれから6~7年という歳月が過ぎて今年で僕も30歳になりました。そこでいろいろ考えることもあり、秀くんからいいきっかけももらったので『出てみようかな』という気持ちになったんです」と答えている。

「仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL」という大看板を掲げ、多くのレジェンドライダーが勢ぞろいする映画において、ライダーたちそれぞれのシリーズの「その後」の姿と、彼らがどのようにして登場するのかという点は、注目を集める重要なポイント。この点について、レジェンドライダーパートの脚本を手掛けた高橋悠也氏は、「『オーズ』だと、相棒のアンクがなぜ復活したのか、その理由がちゃんと語られます。テレビシリーズの最終回を受け、消滅してしまったアンクと再会した映司が、彼にどんな言葉をかけるのか?とか、『MOVIE大戦アルティメイタム』の劇中でフォーゼドライバーを失ってしまった弦太朗が、今回どうやって変身するのか?とか、いろいろと時間軸による仕掛けがあります。ライダーによっては、『その後』だったり、そうじゃなかったり、いろいろ違いますので、それらの部分にも注意して観てほしい」と、今回の意図を説明する。

高橋(一)氏も、「心がけていたのはそれぞれのファンに喜んでもらえるような登場と活躍でした。ですので、テレビシリーズやこれまでの映画からの繋がりを大事に、短いながらもそれぞれの"らしさ"が出ることを意識していました」と明かす。

『オーズ』についても、「ファンにいかに喜んでもらえるかということを一番に考えて、短いシーンで、ピンチ~再会~共闘~別れという流れをテレビや映画のシーンをオマージュしながら脚本の構成を練りました。当時の『オーズ』ファンの方にニヤっとしていただけたらと思いまして。そして渡部さんに相談して最終的には今の形になりました。ちょっと憎まれ口を叩いたり、アイスのくだりは渡部さんの意見を取り入れていますが、あのやりとりが映司とアンクっぽいですよね」と高橋(一)氏。

「今日のぶんの、アイスよこせ!」は、2人の関係を象徴するセリフだが、渡部は「アンクは、タダじゃ働かないというスタンスを貫いているんです。メダルを映司に渡すときも、絶対に見返りを求める。"人間に協力してしまっている"というグリードとしての悔しさもあると思うので、あくまでもこれは"俺があいつを利用している"んだ、アイスは報酬なんだという、アンクのすべてが詰まっている言葉」だと感じており、三浦も「このセリフは毎回言ってるわけじゃないけれど、大事なときやポイントポイントで言っていますよね。周囲が険悪な雰囲気になったり、やけにざわついたりするとき、アンクのこの言葉でなぜか丸く収まってしまうというか、まとまるんですよね(笑)」と印象を語っている。「今日のぶんの、アイスよこせ!」が劇場でどう用いられているのか、にも注目だ。

そして撮影の日。渡部は「"出会い"のシーンが撮影の最後だったんです。撮影の日はすごい台風だったなあ」と振り返り、「もう終始、楽しかったとしか言いようがない」。三浦も「そうです。楽しかったという言葉しか出てきません」と声をそろえる。撮影自体はハードだったが、渡部は「まる1日かかって撮影していたのですが、あっという間に終わっちゃった感じ。1日が長いな、とはまったく思いませんでした。テレビシリーズを撮っていたときの、無邪気に一生懸命頑張っていた記憶に戻りながら、6~7歳くらい若返った気持ちでやっていました」と充実ぶりをのぞかせた。

その姿を見守る高橋(一)氏は、「撮影現場で見る2人はさらに特別で、数年のブランクを全く感じない、2人が現場にいるだけで映司とアンク、そして『オーズ』の世界が出来上がる。もう一度2人の映司とアンクが見られるということがうれしかったですし、それと同時に2人の芝居に魅了されました」。そしてこみ上げる思いから、「ラストシーンは上堀内監督とスクリプターと涙ぐみながらモニタを見ていました」という。

迎えた映画公開。2人も関西で精力的に舞台あいさつを行った。高橋(一)氏は「仕上がりはキャスト、スタッフの思いがたっぷり詰まった手応えのある出来になりましたが、作品はお客さんが見て初めて完成するものだと思っているので、お客さんがどんな反応をするかは本当に心配でした。でも9日、10日に渡部さんと三浦さんと一緒に関西の舞台あいさつをさせていただいた際に泣いておられるお客さんが多くいらっしゃって本当にありがたかったです。こちらが泣きそうになっちゃいました」と、思いが届いたことに感謝する。

ファンの変わらない熱い思いを直接受け、高橋(一)氏は「皆さんにとって『仮面ライダーオーズ』、映司とアンクが特別であるように、私にとっても特別な存在です。放送当時、チーフプロデューサーの武部(直美)さんをはじめ、血を吐く様な思いで物語を紡いだ脚本の小林靖子さんや田崎(竜太)監督をはじめとする監督陣、多くのスタッフと唯一無二のキャストで作った作品だからこそ今も支持され、何より高い要求に応えて最後まで演じ切った渡部さんと三浦さん、2人のキャストの魅力が今も衰えない人気を誇っているのだと今回あらためて実感しました」と、『オーズ』の作品としての真価を再認識したという。

映画では、映司がアンクを思い出す回想シーンが描かれる。「あのシーンは、渡部さん自身が選んだアンクの思い出なんです」と高橋(一)氏。映画には、役を超え、キャストとスタッフの6年分の思いが込められている。

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