せっかくの海外旅行。「いろいろな観光地を巡りたいから、同じ場所に長居したくない」という人も多いだろう。同感だ。しかし、ベトナム随一の景勝地にして、世界遺産の「ハロン湾」だけは、何としても一泊してほしい。今回、クルーズ客船で同地を周遊してきたのだが、あまりに美しい絶景と対面。それらは、泊らずして見ることが叶わないのだ。
2度も世界遺産に登録された「ハロン湾」
ハノイから約3時間半、バスに揺られると到着する「ハロン湾」は、東北部クアンニン省ハロンシの南に位置する。1,553平方キロメートルという広大な湾内に、大小3,000もの奇岩が乱立する景勝地として知られ、それらの奇岩は悠久の時をかけながら雨によって石灰岩が溶かされて形成されたもの。
1994年にユネスコの世界自然遺産に登録され、さらに2000年には範囲が拡大されて再度登録されるという、なんと2度の世界遺産登録が成された地でもあるのだ。そこからは、ハロン湾がいかに美しく、そして稀有な地であるかがわかるだろう。
ハロン湾観光の主流は"日帰り"。だが……
湾の玄関口の港には、500隻ものクルーズ船が並んでおり、そのうち約150隻が宿泊設備を備えた船となっている。その数からもわかる通り、ハロン湾観光の主流は"日帰り"。昼間の湾を巡るランチ付きのクルーズが人気を博す。
しかし、当然だが昼間のクルーズでは、朝日や夕日に染まる湾の情景は見ることができない。現地のコーディネーターいわく、このハロン湾がもっとも美しく輝くのは、それら幻想的な光で海原が染まる瞬間なのだという。そんな絶景を拝むためには船で一泊する必要があるのだ。
現地に到着し、港から海を見渡してみても、立ち並ぶ奇岩の姿は見えない。湾の奥では、どんな光景が待っているのだろうか。胸を高ぶらせながらクルーズ船に乗り込んだ。
旅情感あふれるクラシカルな船
ハロン湾観光の魅力は、その美しい景観だけではない。美味な食事やアクティビティなど見どころ満載のクルーズ船も楽しみのひとつ。今回乗船した「バーヤ・クラシック号」は、アジアンクラシカルな佇まいの木造帆船で、これが何とも味があってイイのだ。
時折、聞こえてくるキシキシと木の軋む音が心地いい船内には、客室(バス・トイレ・ベッドルーム・バルコニー)はもちろん、スパルーム、レストラン&バー、サンデッキなどの充実した設備が整っている。中でも360度の大パノラマで湾の景観が眺められるサンデッキがオススメで、ここで絶景をつまみにビールを飲めば……もう申し分ない。
また、このバーヤ号は食事が美味なことでも有名。ベトナム名物のフォーや、湾内で獲れた鮮魚を使用した創作料理など、いずれも船内で作ったとは思えないほどクオリティが高いのだ。朝昼はビュッフェ形式で、夜はコース料理が提供された。
このほか、夜はフィッシングや料理教室、朝はサンデッキでの太極拳など、さまざまなアクティビティが用意されているのも楽しい。世界各国から訪れている観光客と親交を深めることもできる。
さて、次ページではいよいよハロン湾の絶景を紹介していこう。