ルネサス エレクトロニクスは、回路線幅が16/14nm(ナノメートル:10億分の1メートル)世代以降のフラッシュメモリ内蔵マイコン向けにフィン構造の立体トランジスタを採用した、SG-MONOSフラッシュメモリの大規模動作に成功したことを発表した。

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    16/14nm世代SG-MONOSアレイを開発

近年、自動運転車の進化やIoTを介したスマート社会化が加速し、より高性能かつ低消費電力を目指して微細なプロセスを用いた最先端の高信頼性マイコンが求められている。このため同社は、現在量産中あるいは開発中の40/28nm世代のプロセスをさらに先取りし、16/14nm世代プロセスに混載可能なフラッシュメモリの開発を行い、高性能・低消費電力の先端ロジックと大容量・高信頼性の微細不揮発メモリの組み合わせによるマイコンの進化を追及している。

同社は昨年、従来採用してきた電荷トラップ型のフラッシュメモリ技術を応用展開し、フィン構造SG-MONOSフラッシュメモリセルの開発に成功した。同フラッシュメモリセルを16/14nm世代以降のマイコンに内蔵するためには、主にメモリの大容量化に伴う特性のばらつきが課題であったが、このたび同社は大規模メモリでも動作の検証に成功し、100MB超のフラッシュメモリを混載する高性能・高信頼マイコンの実現に向けて前進した。

今回の試作にあたり、フィン構造向けに成膜条件・加工条件・イオン注入条件などのプロセス条件の最適化を行った結果、従来のプレーナ構造と比較してプロセスステップ数を増加させることなくメモリアレイの試作が可能となり、フィン構造で期待される短チャネル効果抑制・ばらつき低減の効果を安定して得ることができた。

また、書き込み電圧を低い電圧から段階的に上昇させるステップパルス書き込み方式をアレイ動作に取り込み最適化を進めることで、高速書き込みと信頼性の両立を図った。その結果、従来のプレーナ構造よりも高速な書き込み/消去を実現すると共に、データ保存用フラッシュメモリで従来通りの25万回の書き換えを行った後も、書き込み/消去速度にほとんど影響がない結果を得た。

さらに、書き換え動作後に160℃で10年以上の保持時間を維持、従来と同等であることを確認した。フィン構造の特長である急峻なしきい値電圧分布は、160℃の高温下でデータを保持した後も維持されており、従来の高信頼性を維持したまま大容量化することが可能であることが確認できたという。

今回の成果は、SG-MONOS構造フラッシュメモリによる、16/14nm世代以降に対応し、100Mバイト超のメモリを搭載した、28nm世代比4倍以上の処理性能を有する高信頼マイコンの実現に向けて大きく前進したことを示すもの。同社は、今回の大規模動作実証を踏まえ、16/14nm世代のマイコンを2023年頃の実用化に向けて開発する計画だとしている。