――お2人のように、特撮作品でないテレビドラマや映画を手がけている脚本家の中で、「仮面ライダー」を書いてみたいと思われている方たちも多いとうかがっています。お2人にあらためて、クリエイターを惹きつける『仮面ライダー』シリーズの魅力とはいったい何なのか、お話をしていただけるとありがたいです。

武藤:日本のテレビドラマ界でそうそう出来ることではない、1年間にわたって展開するSFドラマ、アクションドラマを作り上げるという、大きな枠組みの魅力がまずあります。1年間、40数本のエピソードでキャラクターを育てて、アクションシーンやSF的エッセンスなど、自分の好きな要素を盛り込むことができる。僕にとって「仮面ライダー」とは、石ノ森章太郎先生の描かれた原作コミックの印象が大きく、かなり強い影響を受けています。他にも石ノ森作品は大好きで、『ビルド』での「記憶を失った主人公」「人体実験によって生まれる怪物」「科学の在り方、科学と人間の向き合い方」など、根底に流れる要素は石ノ森作品から得たイメージを膨らませていったところがあります。

最初の『仮面ライダー』の魅力って、ヒーローにあたる存在が悪の組織と出自を同じくするという部分だと思います。正義と悪は本来「表裏一体」で、裏を返せば、ヒーローになるためには何が必要なのか、というテーマに説得力を持たせることができるんです。そして「仮面ライダー」シリーズは、幼い子どもたちが生まれて最初に観る連続ドラマでしょう。その中で、自分の死生観、人生観など、さまざまなメッセージを送ることができるというのは、替えがたい魅力です。ですから「仮面ライダー」を書きたいという脚本家の方が多くいるというのは、深くうなずけます。

高橋:1年間にわたる連続ドラマを作り上げるため、長い時間を費やして、数多くのキャラクターと付き合いながら過ごしていった経験こそが、「仮面ライダー」の魅力。僕自身も2年という時間をかけて、『エグゼイド』に取り組んでいました。今から思うと、『エグゼイド』を書いていた間は、まるで龍宮城にいたような気分なんですよ。いざテレビシリーズが終わりかけて、外で違う仕事をし始めると、なんか異質な感じがしました。「仮面ライダー」を愛する特撮ファンのみなさんの「熱量」も含めてなのですが、ほかのテレビドラマや映画ではないような、違うエネルギーをもらいながら作ってきた作品が『エグゼイド』だったと思っています。

僕の考える「仮面ライダー」像とは、「涙を隠すために仮面を被る」存在、つまり悲しみを背負って戦うヒーローです。ただ正義のヒーローが悪を倒すという構図、それだけにとどまらない「二律背反」や「不条理」など、複雑かつ深いテーマを描くことのできるヒーロー作品……そこも「仮面ライダー」の大きな魅力なんですね。

高橋悠也(たかはし・ゆうや)
劇団UNIBIRDを主宰し、脚本・演出を手がけるほか、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』『35歳の高校生』』『金田一少年の事件簿N』『相棒』などのテレビドラマ、『エイトレンジャー』『曇天に笑う』などの劇場映画、『ルパン三世』(2015年TVシリーズ)などのテレビアニメなど、幅広い分野で活躍する。2018年リリース予定のVシネマ『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング』の脚本も執筆している。
武藤将吾(むとう・しょうご)
柏原寛司、西岡琢也に師事し、2002年に『野球狂の親父』で第15回フジテレビヤングシナリオ大賞佳作を受賞。『電車男』『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』『若者たち2014』『怪盗 山猫』をはじめとするテレビドラマ、『クローズZERO』『テルマエ・ロマエ』などの劇場映画と、人気作・話題作のシナリオを多数手がけている。2017年9月3日から放送中の『仮面ライダービルド』のメインライターとして精力的に活躍中。
秋田英夫
主に特撮ヒーロー作品や怪獣映画を扱う雑誌などで執筆。これまで『宇宙刑事大全』『宇宙刑事年代記』『メタルヒーロー最強戦士列伝』『ウルトラマン画報』『大人のウルトラマンシリーズ大図鑑』『ゴジラの常識』『仮面ライダー昭和最強伝説』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『ゴーグルV・ダイナマン・バイオマン大全』『鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー大百科』をはじめとする書籍・ムック・雑誌などに、関係者インタビューおよび作品研究記事を多数掲載。

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