ベルギーの独立系半導体ナノテクノロジー研究機関であるIMECは、米国サンフランシスコで12月2日から6日にかけて開催されている半導体デバイス技術に関する国際学会「2017 International Electron Devices Meeting(IEDM 2017)」において、「p型Ge基板にGaに高濃度ドープしたソース/ドレインを用いることで、5×10-10Ωcm2の低接触抵抗率を実現した」と発表した。

高濃度のGa活性化低接触抵抗率は、低サーマルバジェットのナノ秒レーザー活性化(NLA)により達成されたという。この結果は、Gaを高濃度にドープされたGeリッチなソース/ドレイン接触が、先端のpMOSデバイスにおけるソース/ドレインの寄生抵抗抵抗を抑えるための有望な方法であることを示しているとimecは述べている。

  • Ge基板へのGaイオン注入とナノ秒レーザーアニールによる活性化のTEM画像
  • Ge基板へのGaイオン注入とナノ秒レーザーアニールによる活性化のSIMSプロファイル
  • Ge基板へのGaイオン注入とナノ秒レーザーアニールによる活性化。左がTEM、右がSIMSプロファイルおよび活性キャリア濃度レベル(計算値) (出所:IMEC Webサイト)

MOSデバイスのさらなる微細化を実現するためにはCMOSソース/ドレインコンタクト領域をこれまで以上に縮小化しなければいけないが、それに合わせて、ソース/ドレイン接触抵抗率も低下させる必要がある。長年にわたってpMOSデバイスではボロン(B)をドープしたSiソース/ドレインコンタクトが使用されてきたが、より高度なpMOSデバイスでは、歪みを導入するためにGeおよびSiGe(Sn)ベースのソース/ドレインが用いられている。しかし、Si基板へのGe含有量が高いほど、B活性化およびGeまたはGeリッチSiGeにおけるB溶解度が低下することが知られていた。

今回の成果は、IMECのほか、KU Leuven(ルーヴェン・カトリック大学)、および中国の復旦大学が実施したSi、Si0.4Ge0.6およびGeにおけるGaドーパント活性化の包括的な研究によって得られたもので、同研究では、Gaイオン注入後、ドーパント活性化技術として、広く普及している高速熱アニール(RTA)とNLAを用いて行われたという。その結果、NLA後のGaドープGeソース/ドレインコンタクトの記録接触抵抗は5×10-10Ωcm2であり、ドーパント活性化レベルが5×1020cm-3であったほか、400℃でのRTAの活性化では、1.2×10-9Ωcm2という接触抵抗が得られたとする。

この成果は、pMOSデバイスにおけるGeまたは高Ge含有ソース/ドレインコンタクトのためのドーパントとして、BよりもGaが好ましい可能性を示すもので、imecにて次世代MOSデバイス開発を担当する堀口直人氏は、「今回、Ge含有量の高いソース/ドレインコンタクトのために、10-9Ωcm2をはるかに下回るコンタクト抵抗を達成できたことは、NLAまたはRTAによるGaドーピングおよび活性化が、これらのソース/ドレインコンタクトに対するBドーピングの魅力的な代替物であることを示すものである」と説明している。

なお、imecは、IEDM 2017にて2段積層したゲート・オール・アラウンドSiナノワイヤFETを搭載したリング発振器についても発表しており、同発振器の性能は、5nmプロセス以降のデバイス実現の将来性を明確にしたと主張している。