2021年の大学入試改革に向けて、小中高の教育のあり方が大きく変化している。というのも、これまでの入試テストは、問題用紙が配られ、それに対する答えを記入するというのがスタンダードだった。それが今、変わろうとしている。

どのように変わるのか。文部科学省の「学習指導要領のポイント等」によると、「思考力、判断力、表現力等の育成のバランスを重視する」という一文がある。つまり、これまで受験で重視された「記憶力」ではないのだ。もちろん、学習をするにおいて記憶力は大切だ。ただ、それ以上に思考力、判断力、表現力等が重視されることになる。

では、具体的にはどういう学習になるのか。これまで、しばしば多くの学校の授業を見学・取材させていただいたが、グループワークの時間を多くとる学校が増えている。先生がテーマを与え、グループ分けされた生徒たちがそれについてディスカッションする。そして、プレゼンテーションするという具合だ。もちろん、正当な答えはない。生徒たちの議論から生まれた結論が、まさしく答えなのだ。

離島に先進的学校を新設

こうした教育を目指すために、新たに中高一貫校を新設しようとしている自治体がある。広島県だ。

もちろん、既存の学校の教育方針を変更し、こうした新たな学習を推進していくというのが大筋だ。だが、そうした新教育を目指し、学校を新設するというのも良案だと思う。

では、広島県はこの学校をどこに新設するのか。それは瀬戸内海に浮かぶ大崎上島。橋でつながっていない“離島”としては、瀬戸内海で小豆島に次ぐ大きさの島である。「地理的及び自然的特性を生かした振興を図るための特別の措置を講ずること」を目的とした、「離島振興法」が適用された島である。

広島県教育委員会 寺田拓真氏

まず、県庁にて教育委員会の方に話をうかがった。なぜ、県が大規模な学校を新設するのか。広島県教育委員会事務局課長の寺田拓真氏は、「広島から日本の教育を 変えていきたい。その手本となるべき学校の新設を目指す」と話す。広島県は、一昔前はいわゆる“不良”と呼ばれる若者が多かったところ。文科省から是正指導を受けたこともある。それが今、小学校教育で全国5位、中学校教育で15位前後の学力を達成しているのだそうだ。教育委員会や学校の先生といった方々の努力は並大抵ではなかったであろう。