全世界でシリーズ累計7,000万部超の発行部数を誇る人気漫画『鋼の錬金術師』の実写映画版が、Hey! Say! JUMPの山田涼介を主演にむかえ、1日より公開された。亡き母を生き返らせようと、禁忌を犯して挑んだ"人体錬成"に失敗し、左脚と右腕を失った兄エド(山田)と、身体全部を持って行かれ鎧に魂を定着させた弟アルの物語を描いていく。

ヨーロッパ風の世界観を日本人が演じることになるが、物語を引っ張っていたのが、山田が演じた主役・エドだ。並々ならぬ気迫と、スクリーンに映るだけで圧倒的にドラマチックになる存在感を誇る。

今回は、アニメ版の主役を演じていた声優・朴ロ美にインタビュー。原作終了前に放送され、オリジナルの展開で完走した2003年版の第1期シリーズ、そして原作終了に合わせ展開を合わせた2009年版の第2期シリーズ、さらに数々の映画版と、数回にわたりエドという役を演じきっている。朴が感じるエド役の難しさ、そして山田に感じた姿とは。

  • 朴ロ美…1972年1月22日生まれ、東京都出身。女優として舞台から声優と幅広く活躍。多くの洋画、海外ドラマの吹き替えや、アニメでは『∀ガンダム』(99年)主役 ロラン・セアック役などの少年役から『NANA』(06)の大崎ナナ役などのヒロインまで出演は多岐にわたり、『鋼の錬金術師』アニメ版では、2003年の第1シリーズ、2009年の第2シリーズを通して主役のエドを演じる。12月12日より出演舞台、劇団桟敷童子『標〜shirube〜』が上演。”伝説の風を呼ぶ女”という役どころに挑む。撮影: Wataru Nishida(WATAROCK) ※ロは王へんに路

通り一辺倒で演じきれるような役ではない

――『鋼の錬金術師』、実写化すると聞いたときの印象はいかがでしたか?

鋼の関係者の方から実写化の話を聞いたのではなく、最初は私のとても信頼している舞台衣裳家の西原梨恵ちゃんから、「ロミさんがやったアニメの実写化の衣裳をやることになったの」と聞いたんです。「私がやったアニメって結構いっぱいあるよ?」と言いながらも「もしかして、『鋼の錬金術師』?」と冗談半分で聞いたら大当たりで、本当に驚きました。彼女は舞台の衣裳家なので、映像の衣裳を、しかも『鋼の錬金術師』を梨恵がやる!? と先に驚いてしまったので「『ハガレン』が実写化する」という驚きが来たのは、後からじわじわ、という感じでしたね。

――では、実際に実写化された作品を観て、どのような感想でしたか? 特に、ご自身でも演じられていたエド役については思い入れも深いのかなと思います。

もう、観るまでに緊張してしまって……。西原梨恵ちゃん伝手に山田くんと一緒にご飯を食べる機会があったんです。その時に、山田くんがどれだけこの作品を自分の中心に置いているかということ、どれだけの思いで作品を背負おうとしているかということをひしひしと感じて、観る前から「応援したいな」という気持ちになっていました。

と、ともに、「これで実写版を観て、全然グッとこなかったらどうしよう」という不安もないまぜになってしまって、とてつもなく緊張しました。でも観終わった後は、山田くんのエドがスクリーンの中にいた、というか、山田くんではなく「エドがいた」と思いました。

エドって、すごく難しいんです。通り一辺倒で演じきれるような役ではないので、ビジュアルだけ寄せたって絶対に無理で、マインドがエドになっていないと演じる事ができない。山田くんは、見事にこの作品を背負って立っていたんじゃないかなと思いました。

――マインドから変えなければ演じられない役なんですね。

変えざるをえない、というか。この作品は本当に魔物みたいな、とんでもないエネルギーを内包しているんです。こちらはまったく無意識なのに、全部持ってかれるんですよ。「もっていかれた……!!」というエドのセリフがありますが、こちらはエドに持ってかれた……!!という感覚です(笑)。そのぐらい凄まじいエネルギーが必要な作品で、私も全身全霊をかけて演じていました。荒川先生はなんというものを生み出してくれたんだ……と思います。

だから山田くんのエドを見ていると、その様が見える気がするんです。私も演じている時に、エドに「見つけられた」感がすごくありました。まるでエドに「そのエネルギーを俺に貸せ」と言われたような……。山田くんもとってもエネルギーが高い子なので、この作品に見つけられちゃって、もう多分、肉体も精神も全て彼方に持って行かれようとしているんだな、という感じがしました。