カルロス・ゴーン氏による日産V字回復の代名詞「コミットメント経営」は、終焉の時を迎えているのかもしれない。数値目標を掲げ、それを必ず達成することで日産を再び輝かせた経営手法だが、無資格検査問題で詳細発表が延び延びとなっている新たな中期経営計画は、少しカラーの違うものとなりそうだ。

日産の新たな中期経営計画は、ゴーン体制の代名詞だった「コミットメント経営」とは一線を画す内容になりそうだ(画像は横浜にある日産のグローバル本社)

検査不正で2カ月に3度の会見

国内工場での完成検査における不正問題で、日産自動車は信頼性の低下およびブランドの毀損に揺れている。日産の西川廣人社長は11月17日、国内工場での完成検査員による無資格検査の報告書を国土交通省に提出するとともに、横浜の本社で記者会見を行った。

この検査不正問題が明るみに出た後、西川社長の会見は10月2日、11月8日(中間決算発表後)、同17日と2カ月で3度に及び、いずれも冒頭に陳謝するものだった。11月17日の会見は、ことのあらましと今後の対策を説明して質疑に応じ、2時間半にわたる長丁場となったが、17年間の日産長期政権を担ったカルロス・ゴーン氏から、この4月に社長を譲られた西川社長にしては、いつにない歯切れの悪さが目立った。

特に、ゴーン会長を含めた経営責任については再三問われたが、この日産国内工場における完成検査不正が、ゴーン経営以前から長年にわたって常態化していたことから、ゴーン流経営は関係ないとして「私を含む現経営陣の責任は、この状態から挽回させることが一番の責務だ」とし、経営責任をとるよりも挽回に注力していくことを強調した。

日産の西川社長(2017年11月8日の決算説明会で撮影)

必達目標が一人歩き?

一方で、ゴーン流経営の真骨頂であったコミットメント(必達目標)経営については、「上位のマネジメントの目標だけが一人歩きする歪みがあったのか」と発言。この方針からの転換を示唆したのである。

すでに日産は、前中期経営計画である「日産パワー88」でのグローバルシェア8%、営業利益率8%が未達に終わっており、本年度からはルノー・日産・三菱自動車アライアンスの中期経営計画と連動し、新たな6カ年経営計画を始動させるが、今回の不祥事により、計画内容の中味についても発表が後倒しとなっている。

西川体制は、ゴーン会長が取締役会議長を務めてはいるが執行責任は西川社長にあり、改めて日産新6カ年中期経営計画を進めるにあたっては、信頼回復を第一にした日産全体の立て直しが主体となる。すなわち、ゴーン流コミットメント経営の終焉を意味することになる。