いまや若手人気俳優の登竜門となっている「仮面ライダー」シリーズ。視聴者はもちろんだが、現場でその演技を間近で見るスタッフたちは、新人たちが想像以上の輝きを放つ瞬間に立ち合うことがあるという。10月27日に行われたトークイベント「白倉伸一郎 プロデュース作品を振り返る。」で、東映の白倉伸一郎氏と武部直美氏が、『仮面ライダー電王』(2007年~2008年)で主演を務めた佐藤健が当時から見せていた非凡さについて振り返った。

  • 左から武部直美氏、白倉伸一郎氏

『仮面ライダー電王』は多重人格がテーマになっており、イマジン、そしてイマジンに憑依された野上良太郎(演:佐藤健)には声優キャストが声をあてていた。その方法として、それぞれのイマジンに憑依された良太郎の演技を見た声優キャストが、そこからキャラクターの声の演技を作り上げていくと考えるのが普通だが、実際はその逆であったのだという。

武部氏によると、「撮影では、例えばモモタロスであれば関俊彦さんに一話分を録ってもらって、それを健くんが聞いて演技作りをしていたんです。全部イマジンが出る度にそうしていました。それは健くんにしかやっていません」とのこと。意外な演出方法に、会場からは驚きの声があがっていた。

また作品序盤には、憑依時にも佐藤の声が一部使用されており、それには武部氏が「健くんの演技が素晴らしくって、全部のセリフを乗り換えるのはもったいないという話にもなったんです」と理由を語っていた。最終的には武部氏が「今思えば健くんが天才だったんですね。よく思うんですけど……」と振り返ると、白倉氏も「天才なんですよ」と深く共感していた。

なお、イマジン役を務めた声優陣については、佐藤やスーツアクターの高岩成二といった"役者に声をあてることをおもしろがってくれそうかどうか"が焦点になったという。そのため、アニメだけではなく外国映画の吹き替えや、自身も舞台をやっている声優を選んだと武部氏が明かしていた。