新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、NEDOプロジェクトにおいて、白山らが従来のn型熱電材料に対し6割以上の出力因子の性能を有する、多孔質p型マグネシウムシリサイド系熱電材料の創製に成功したことを発表した。

多孔質マグネシウムシリサイド系熱電材料で試作した熱電変換モジュール

従来、n型のマグネシウムシリサイド系で高い熱電性能を示すことは知られているが、p型については2割程度の出力因子しか得られていなかった。このため、モジュール作製の際には、n型熱電素子にはマグネシウムシリサイド系熱電材料、p型熱電素子にはマンガンシリサイド系熱電材料を使用することが提案されていたが、これらの構造では、熱電発電モジュール化した際に熱膨張率の差による熱応力破壊耐性に課題があった。

このたび白山は、石川県工業試験場、北陸先端科学技術大学院大学と共同で、マグネシウム(Mg)-シリコン(Si)-スズ(Sn)を出発原料とした基材を、造孔材(ポリビニルアルコール:PVA)を用いて多孔質化処理することで、多孔質n型熱電材料の開発に成功した。

さらに、同手法をp型熱電材料に応用展開し、電子構造計算に基づく物性予測を行うことで、n型熱電材料に対し6割以上の出力因子(Power factor)の性能を有する多孔質p型マグネシウムシリサイド(Mg-Si-Sn)系熱電材料の創製に世界で初めて成功した。この新技術は、孔を含まない熱電材料と同等の導電率を持ちながら低熱伝導率であるという特殊な特徴や、「真空・不活性ガス置換焼結」という一般的な生産方式に基づいているため、工業生産への移行が容易であるという特徴がある。

熱電デバイスの構成

多孔質マグネシウムシリサイド系熱電材料(n型、p型)の出力因子の温度依存性

今後、自動車エンジンの排熱や産業分野で300~400℃の未利用熱エネルギーを電力に変換する低コスト・高耐久性熱電変換モジュールの実現を目指すとともに、2020年度末を目途に実用化および事業化を目指すとしている。

なお、同成果は、11月20日~22日に東京ビッグサイトで開催される「INCHEM TOKYO 2017」の「NEDO省エネルギー技術フォーラム2017」にて展示され、最新の省エネルギー技術として取り組みや開発について紹介される。