「新型うつ病」には、医師とのカウンセリングが有効とされている

常に明るくてはつらつとした知人や友人を見て、ふと「あの人はうつ病には無縁だろうな」と感じた経験がある人もいるだろう。それでは、本当にうつ病の発症しやすさには個人差があるのだろうか。近年になって若年層に急増し、いろいろなメディアで目にするようになった「新型うつ病」とあわせて、桐和会グループの精神科医の波多野良二先生に聞いてみた。

生真面目な「メランコリー型」が患者に多い

例外もあるが、一般的にうつ病と診断される人は真面目で規律を重んじ、責任感や義務感も強く、仕事熱心な人が多い。このような人たちの性格は「メランコリー型」と呼ばれ、どれだけ仕事が大変でも、どんなに悩みを抱えていても、人に相談したり、助けを求めたりしないとされている。

仕事に失敗するなど、何かうまくいかないことがあろうものなら、ひたすら自分を責める傾向がある。すべてひとりで抱えこんで必死でがんばる中、ストレスがたまっていき、それが自分自身の耐えうる限界を超えてしまうと、うつ状態になる可能性が高くなる。そしてうつ状態が長く続くと、うつ病につながりかねない。

SEや中間管理職も要注意

「『メランコリー型』の人は真面目なぶん、頑固で融通が利かない面もあります。うつ病と診断されて医師にしばらく休むよう言われても、責任感から周囲に隠して仕事をし続け、さらに悪化していくケースもあります」と波多野先生は語る。

従事している仕事にも特徴があるという。

「職業別では、やはりIT関連企業に勤める30~40代のシステムエンジニア(SE)などが非常に多いですね。若手の指導をしながらシステムを作り上げ、その後に顧客の要望を聞いて手直ししなくてはいけません。年齢的に体力が不安になってくるのに、時に仕事は深夜におよぶようですし。営業職や建設会社勤めの方のように、昼間は得意先回りや現場、夜はデスクワークという多忙な方も心身共に過労でうつになりやすいです。また、業種に関わらず中間管理職の方々は、結果を早急に求める上司とスキルが十分でない部下との板ばさみになってしまってストレスがたまるでしょう」。

「新型うつ病」って何?

「新型うつ病」は最近よく耳にする言葉だが、正確には医学用語ではない。「メランコリー型」がなりやすい従来のうつ病とは症状が異なり、近年20~30代半ばの若年層に患者が急増し、精神科を受診しているという。

「『新型うつ病』は、まず本人が会社に行きたがらないケースが多いです。仕事がうまくいかないと上司や同僚のせいにするなど責任転嫁の傾向も強く、会社にいる間はうつ状態で、退社すると元気になり、休日は元気。『体調が悪いから』と会社を休んで、出掛けていることもあります。うつであることを隠さず、むしろそれを理由に責務を逃れようとするので、周囲からは『サボり』や『怠け』ととらえられることも多いです。ただ、実際に診断してみると、本人も非常に苦しんでいる場合もあるため、単なる『怠け』か病気か、その判断は難しいところですね」。

ゆとりある環境で育って社会人になった若者なら、心身共にハードな会社勤めを苦痛に感じる場合もあるだろう。理由が何であれ、不登校だった人は社会に出てからの適応が難しいというデータもあるそうで、これまでの生活歴も関連する新型うつ病には、薬よりもカウンセリング中心の治療が効果的とも言われている。

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記事監修: 波多野良二(はたの りょうじ)

1965年、京都市生まれ。千葉大学医学部卒業、精神保健指定医・精神科専門医に。東京の城東地区に基盤を置く桐和会グループで、日夜多くの患者さんの診療にあたっている。