東北大学は、宮城県内を対象に、受動喫煙の社会格差を明らかにしたと発表した。

教育年数と受動喫煙の関連(出所:東北大学プレスリリース)

同研究は、東北大学大学院歯学研究科の相田潤 准教授、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の松山祐輔 研究員らの研究グループによるもので、同研究成果は、10月28日に国際科学誌「Journal of Epidemiology」でオンライン公開された。

受動喫煙の被害は、収入や学歴などの社会経済的状況が低い人ほど受けやすいことが海外の研究で報告されている。しかし、受動喫煙の格差について、日本での報告はほとんどなかった。そこで同研究は、宮城県の成人非喫煙者を対象に、教育年数と家庭・職場での受動喫煙の関連を明らかにすることを目的に実施された。

同研究では、宮城県健康調査(2014年)の調査データを用いた横断研究が行われた。宮城県の成人からランダムに抽出された2,632名に自記式調査票を郵送し、2,443名(92.8%)から回答を得た。喫煙者を除外後、家庭での受動喫煙について有効回答が得られた1,738名および職場・学校での受動喫煙について有効回答が得られた1,003名のデータを分析。受動喫煙は「ほぼ毎日」、「週に数回」、「週に一回未満」、「なし」の4段階とし、年齢、性別、世帯人数、過去の喫煙歴、タバコの健康被害の知識を調整した多変量順序ロジスティック回帰分析で分析を行った。

タバコの知識と受動喫煙の関連(出所:東北大学プレスリリース)

結果、家庭での受動喫煙は19%にみられ、職場・学校での受動喫煙は39%にみられた。その中で、教育年数13年以上の人にくらべ、10‐12年および9年以下の人は受動喫煙が多いという社会格差がみられた。タバコの健康被害についての知識は、家庭での受動喫煙が少ないことと有意に関連した一方、職場・学校での受動喫煙とは有意な関連はみられなかった。

この結果により、日本の非喫煙者には受動喫煙の社会格差があることが確認された。また、知識の普及だけでは格差縮小には不十分であることが示唆されたため、職場での受動喫煙対策を進めるなど、環境への介入が必要と考えられるということだ。