セイバーメトリクスで考える17年ベストオーダー。一発勝負の最強布陣は?…

外野部門で広島の3・4番は確定。あと1枠に誰を選出するか
 ベストオーダーの検討にあたっては、統計的な研究に基づく評価手法であるセイバーメトリクスで用いられる指標を基礎とし、野手については打撃と守備の両方を、投手については投球のみを評価の対象とした。またクライマックスシリーズの成績は考慮せず、レギュラーシーズンの成績だけを用いて評価することにする。用いた指標については原稿の最後に解説を設けた。
 
 ただ、そうした指標の比較では、とても小さな差になることも多い。用いた指標は複雑な算出式で計算されるものだけに、その差のみを通じて“ベスト”を決めてしまうと、実感が伴わない部分もあるかもしれない。そうした場合はその他の記録も用いながら、その都度検討するという方法をとりたいと思う。

 まず外野手から見ていこう。今シーズン、セ・リーグで外野守備に就いた選手はレフトが50人、センターが28人、ライトが36人いた。この中から3人を選ぶわけだ。
 
 指標で図抜けていて、もうそれだけで選ばざるを得ない働きを見せている選手が2人いる。広島の3・4番コンビ・丸佳浩と鈴木誠也だ。丸はセンターとして651打席、1278 2/3イニングに、鈴木はライトとして512打席、1032 1/3イニングに出場した。
 
 セ・リーグの年間最多打席は679、最多守備イニングは1290 2/3。両選手がかなりの出場機会を得ていたことが確認できる。その上でそれぞれ23本、26本の本塁打を放ち、.398、.389という高い出塁率を記録。攻撃力で他の外野手を大きく突き放す活躍を見せた。丸は守備でも高い数字を記録した。
 
 もう1枠の候補は筒香嘉智、桑原将志のDeNAの2人となりそうだ。筒香は打撃での貢献を表す数値が18.2点、守備での貢献を表す数値が-2.8点、合わせて15.4点。一方の桑原はそれぞれ2.6点、17.7点、計20.3点となる。ただ2人はポジションが異なる。
 
 これらの数字はポジションごとの平均的な成績を0に設定しているので、直接比較をそのまま評価としにくい面がある。丸がセンター、鈴木がライトということもあり、レフトで一番の成績を残した筒香とするのが自然なのかもしれないが判断は難しい。
 
 そして、触れずに済ませたくないのが広島の松山竜平だ。レフトを守ったとき(ファーストとライトでの出場時の成績は除く)の松山の成績を算出すると、攻撃での貢献を表す数値が9.6点、守備での貢献を表す数値が3.0点だった。ただ出場機会が302打席、566 2/3イニングと少なく、それをどうとらえるかという問題はもちろんある。
 
 それでも打撃での成績が伸びにくいマツダスタジアムを本拠地としていることや、守備の数値も平均以上をキープしており、攻守でともに質が高かったという点で評価に値すると思う。




ショートは坂本vs.田中、セカンドは強みの異なる選手がしのぎを削る

 18人が守備に就いたショートは、巨人の坂本勇人と広島の田中広輔が抜け出している。攻撃での貢献を表す数値では坂本が24.9点、田中は27.3点、守備では差がついており坂本が10.6点、田中は-0.9点。田中は坂本に守備で大きく差をつけられたが、攻撃では上回っている。これはリーグトップの出塁能力(出塁率.398)などが反映されたためだ。打撃とは別に田中は走塁での働きでも高い値を記録していることなども考慮すると、総合的に見てもほぼ遜色ない働きとなっていいだろう。しっかり出塁し走力を生かして生還するという、リードオフマンに求められる能力に重きを置くなら田中。守備面を求めるなら坂本という判断になるだろうか。
 
 サードはDeNAの宮崎敏郎が最有力候補になるだろう。セ・リーグで守備に就いたサードが41人いたことからもわかるように、固定され出場機会を重ねた選手はあまり多くない。その中で宮崎は564打席、1008イニングの出場を果たし、かつ高打率を残したことで数値が伸びた。シーズン途中で二塁に回った巨人のケーシー・マギーは三塁手としての出場機会の面でやや印象が弱まったのと、守備で宮崎に及んでいない。打撃成績が回復した鳥谷も好値を記録したが、守備が今ひとつだった。
 
 セカンドはヤクルトの山田哲人、広島の菊池涼介、阪神の上本博紀、そして三塁部門でも名前の挙がったマギーが候補となる。非常にレベルの高い選手が多く選考は難しい。それぞれの特徴としては、マギーが.413、上本が.366、山田が.364と高い出塁率を記録しているのに対し菊池のみ.311とあまり高くない。四球の少なさが響いている。(セ・リーグ平均は.318)。
 
 一方で菊池は守備面に強みを持っているが、今季は体調面の不安も伝えられており、それほど大きな差はつけられていない。山田は長打力に長けており、セカンドでは最多の24本塁打を記録。上本は出塁力だけではなく、走塁での貢献もあった。得点の入りにくい甲子園球場をホームとしていたことも加味すると、ネームバリューのある菊池と山田にも決して引けを取らない成績だったと考えることもできる。
 
 マギーはセカンドとしての出場時の打率は.341と図抜けており、わずか254打席で山田と変わらないだけの貢献を打撃で記録している。ただ、最も打席に立った菊池の629打席の半分よりもっと少ないことを考えると、マギーをベストのセカンドとしてよいものかは悩ましい。ポジション別の評価では、シーズン途中でポジションを変えた選手の扱いは難しく、ユーティリティプレーヤーを別に評価するような形があってもよいのかもしれない。
 
 ファーストはDeNAのホセ・ロペスで間違いない。攻守で数字を伸ばし、他の選手を寄せ付けなかった。ただ、実はロペスと同じかそれ以上の数字を記録していたのが広島の“ファースト陣”だ。広島は新井貴浩、ブラッド・エルドレッド、安部友裕らで出場機会をシェアしたが、各々が優れた数字を記録していて、打撃については合算するとロペスとほぼ同じ数字になる。
 
 キャッチャーは広島の會澤翼が打撃で引き離している。併用されたため打席数はそこまで多くないが、出塁率.339、長打率.390とキャッチャーの中では図抜けた成績を残した。守備については盗塁阻止と捕逸の少なさ、失策の少なさによる評価で、リードなどは考慮していないものの、これらの要素で會澤が打撃でつくった差を詰めることができたキャッチャーは見当たらなかった。キャッチャーは併用する球団が多く打席数のばらつきが大きい。そのため個々の選手の比較が難しいが、「キャッチャーとして多くの出場を果たし、その上で攻守で一定の質を保った」という見方からは、ヤクルトの中村悠平なども評価を与えるべきか。




先発は菅野とマイコラスの一騎打ち。最後にベストオーダーを検討


 投手の選考はバックの守備の影響を受けない、投手の能力が色濃く反映される数値と、それを用いて投手の総合的な貢献を計る数値を使って評価していこう。
 
 守備の影響を受けないK%(奪三振割合)、BB%(与四球割合)、打球に占めるゴロの割合で見ていくと、先発投手は巨人の菅野智之とマイルズ・マイコラスの2人に絞られる。だが各要素がほぼ同じような数値であるため、この評価法で2人の間に優劣をつけるのは非常に難しい。
 
 救援投手で活躍を見せたのはDeNAの山崎康晃と阪神のラファエル・ドリスだ。高いK%とゴロ割合が光る。これらの数字ではどちらの投球内容も素晴らしく優劣をつけるのは難しいが、ここでは「より重要な場面での投球」に重みをつけて評価するWPA(Win Probability Added)という指標で比べてみる。WPAでは2.13と0.13と山崎とドリスの間に差があり、山崎のほうが勝負どころでの登板、好投が多かった様子が見て取れる。今回は山崎康を救援部門のベストピッチャーとしたい。
 
 セカンド、ショート、外野の1枠、先発投手で1人を選ぶのが難しい状況になった。どのポジションも候補として名前を挙げた選手であれば誰をベストとしてもおかしくない。判断する上でポイントとなるのは「細く・長く働いた選手」と「太く・短く働いた選手」どちらを評価するかだ(もちろん“細く”や“短く”というのは比較する上での例えである)。
 
 ここでは1つの考え方として「NPBの代表チームとして、ある1試合に勝つためのベストオーダー」と考え、「太く短く」働いた選手も積極的に選んでベストオーダーとしてみよう。判断が難しかったショートの候補、坂本と田中であれば少ない打席数で同等の働きを見せた坂本を、外野では桑原や筒香ではなく松山を、二塁では山田や菊池の半分以下の打席でトップクラスの打撃貢献を積み上げた、マギーを選出することとする。
 
 シーズン中盤に規定打席に達し、突如首位打者争いのトップに立った打者が、その後一気に打率を落としていくケースのように、マギーや松山や坂本が競争相手と同じだけの機会を得たとして、それまでと同じ質の働きを見せられたかはわからない。今回の選び方は、質を保つ可能性に期待した1つの形として受け取っていただきたい。
 
 先発投手も2度少ない先発登板でマイコラスとほぼ同じイニングを投げた菅野を選んだ。なお、1、2番に出塁力に長けた強打者を優先的に置く、セイバーメトリクスで提唱されることの多い形に則った打順も、一案として挙げておく。
 
1中堅 丸 佳浩(広島)
2右翼 鈴木 誠也(広島)
3二塁 ケーシー・マギー(巨人)
4左翼 松山 竜平(広島)
5一塁 ホセ・ロペス(DeNA)
6三塁 宮崎 敏郎(DeNA)
7遊撃 坂本 勇人(巨人)
8捕手 會澤 翼(広島)
9先発 菅野 智之(巨人)
9救援 山崎 康晃(DeNA)
 
野手の評価方法を知る
※野手の評価について
 今回のベストオーダーの検討では、打撃に関してはwRAA(weighted Runs Above Average)を、守備についてはUZR(Ultimate Zone Rating)を用いている。
 
 wRAAは、打撃を出塁力と長打力の両面から評価して、得点をつくり出す上でどれだけ働きを見せたかを評価した数字で、基準(ゼロ)を平均的な打者が同じだけ打席に立ったときの働きに置いたもの。それに対しどれだけ差を積み上げたかを示している。今回は走塁や本拠地球場の性質などは考慮していない。
 
 UZRは、打球をいかにアウトにしたかをベースに、失策の数、また外野手は走者の進塁をいかに阻んだか、内野手は併殺をどの程度完成させたかも考慮している。キャッチャーについては、盗塁抑止と捕逸の少なさ、その他の失策の少なさで評価しており、リードやフレーミング(ストライクゾーンの際のボールのキャッチング技術)などは考慮していない。
投手については本文にて説明した通り、投球回と奪三振、与四球、ゴロ割合という失点を減らす上で重要な要素と、それらを使って算出する総合指標WAR(Wins Above Replacement・先発投手の場合)とWPA(救援投手の場合)を用いた。