「第45回 東京モーターショー2017」で世界初公開されたトヨタ「GR HV SPORTS concept」は、「86」の外観をレーシングイメージでモディファイし、ハイブリッドのパワーユニットを搭載したスポーツカーといえる。環境は至上命題、でも多くの人たちにクルマに乗って欲しい自動車メーカーとしては、ハイブリッドスポーツカーこそいますぐ作り上げなければならないモデルといえるだろう。

東京モーターショーのトヨタブースに展示された「GR HV SPORTS concept」

広い広いトヨタブースのセンターに鎮座した「GR HV SPORTS concept」は、コンセプトカーというより市販予定車のように現実的なモデルに見えた。そのまま市販できそうなエクステリアだし、背後のディスプレイには、このモデルがワインディングを派手なドリフトで激走する映像が流れている。

「なんだ、あとは売るだけじゃないか」、そう思ったくらいだ。最近のコンセプトカーはみんなリアビューミラーがカメラに置き換わっているのに、このモデルはごく普通の大きなドアミラーが装着されているのも、市販間近なんじゃないかとの思いを強くさせた。ところが、スタッフに話を聞いてみてびっくり。展示されているこの車両は、走行できるようにはなっていないという。では、あの走行している映像は?

「GR HV SPORTS concept」のインテリア

「ああ、あれはCGです」とスタッフ。最近のCGはよくできてるな……とそっちに感心してしまった(この映像はYouTubeのトヨタ公式チャンネルでも見ることができる)。しかし、トヨタにとってスポーツカー向けのハイブリッドシステムを開発するなど決して難しいことではないはず。エクステリアはもうこのままでいいので、早く発売して欲しい。

ところが、このエクステリアもあくまでコンセプトカーとしてのものであって、とても公道を走れる形ではないのだという。これにも驚いた。いわゆるスーパーカーがああいった形状で公道を走れるのに、この「GR HV SPORTS concept」は新型車として公道仕様車の認可が降りる形状ではないのというのだ。たとえばヘッドライトが出っ張っている形状などがダメなのだという。

つまり、「GR HV SPORTS concept」はあくまでハイブリッドスポーツカーを世に問うための、まさしくコンセプトカーであって、反響が大きければ本格的な開発を行うかもしれない、ということのようだ。ちなみに、ハイブリッドであることは確定しているものの、その方式は「スポーツカーに最適なハイブリッドシステムを検討中」とのことで、これも決まっていないとの話だった。

トヨタは前回の東京モーターショーで、コンパクトなFRスポーツカー「S-FR」を発表して大きな注目を集めたが、いまだ市販化の具体的な話はない。「GR HV SPORTS concept」が同じ道をたどることはないと信じたい。ベースが「86」なのだから、このコンセプトカーのエッセンスだけでも市販車にフィードバックすることはできるはずだ。現在のパワーユニットにマイルドハイブリッドを追加するとか、あるいはこのかっこいいタルガトップを市販車に新たなグレードとして設定するなどの方法はあるはずだ。

「GR HV SPORTS concept」のエクステリア