PEZYグループのExaScalerとPEZY Computingは2017年10月26日、海洋研究開発機構(JAMSTEC)に設置したスーパーコンピュータ(スパコン)「GYOUKOU(暁光)」で、TOP500のランキングに使われるLINPACK性能で14.13PFlopsを実測したと発表した。今回の測定は7056個のPEZY-SC2チップを使い、13.8液浸槽分に相当する規模での測定である。

なお、次回のTOP500リストは、コロラド州デンバーで開催されるSC17において、11月12日に発表される予定になっているが、このGYOUKOUの性能を超えるスパコンが登録されないと仮定すると、暁光の性能は東京大学-筑波大学が設置したOakforest-PACSスパコンの13.55PFlopsを超えて国内トップの性能であり、世界的にも6位の性能となる。

また、Green500のランキングに使われる消費電力当たりのLINPACK演算性能では暁光は14.69GFlops/Wを達成している。これは、今年6月のGreen500での1位の東京工業大学のTSUBAME3.0の14.11GFlops/Wを若干上回り、世界一の性能/電力値である。

海洋開発研究機構に設置された暁光スパコン。26台の液浸冷却筐体が並ぶ (写真提供:ExaScaler)

暁光は、TSMCの16nmプロセスを使った新開発のPEZY-SC2チップを使うZettaScaler-2.2スパコンである。おおきな性能/電力の改善は16nmプロセスの採用によるところが大きいが、それに加えてシステムボードの電源を48V DC給電にしたことも効いている。PEZY-SC2モジュールの電源電流は12V給電では10A程度となり、I2Rによるロスがばかにならないが、48V給電とすることによりこのロスが1/16になる。

また、Green500では冷却の電力はサーバ電力には含まれないが、フロリナート液浸冷却によりチップのジャンクション温度が下がり、リーク電流が減るという効果も低電力化に貢献している。

PEZY-SC2は2048コアを集積するチップであるが、歩留まり向上のため、1984コアを使用するという仕様になっている。PEZY-SC2コアのクロックは700MHzであり、チップ当たりのピーク演算性能は2.778TFlopsとなる。メモリはDDR4-2400を4チャネル持ち、ピークメモリバンド幅は76.8GB/sである。

なお、TOP500の測定値の提出締め切りは11月1日であり、それまでExaScalerは、より多くの計算ノードを動かし、さらに性能を上げるためのチューニングを続ける。上記の写真では26液浸槽が写っており、26台全部の液浸槽がフル実装で動けば、26PFlopsを超える性能になると推定される。

また、ExaScalerとPEZY Computingは、引き続き暁光の開発を行い、将来的には100液浸槽程度まで規模を拡大し、磁界結合を使う超高速のメモリインタフェースの実現などを行い、より高い性能、より良いエネルギー効率を目指すとのことである。

このシステムの開発にあたり、ExaScalerが科学技術振興機構(JST)の支援を受け、PEZY-SC2プロセサの開発には、PEZY Computingが新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けている。