経済開発協力機構(OECD)は10月18日、報告書「高齢者の不平等を避けるには(Preventing Ageing Unequally)」を発表した。それによると、高齢になってからの不平等のリスクは、現在既に退職している人より若い世代の方が大きくなり、1960年代以降生まれの人が高齢になったときの状況は劇的に変化すると予想している。

報告書「高齢者の不平等を避けるには(Preventing Ageing Unequally)」を発表(表紙画像/OECDサイトより)

不平等は早い段階から拡大

高齢者の割合(OECD平均)をみると、1980年は勤労世代100人に対して65歳以上の高齢者は20人だったが、2015年には28人に、2050年には53人に増加すると予想。多くのOECD諸国と新興諸国では高齢化がより速いペースで進むと同時に、世代が進むにつれて不平等は拡大すると見込んでいる。

また教育、医療、雇用、所得の不平等は、早い段階から高まり始めていると指摘。25歳の大卒男性の場合、同年齢の低学歴の男性より平均余命(OECD平均)が約8年伸び、女性の場合はその差は4.6年と推算している。更に全年齢において、健康状態が悪い人々の労働時間と収入が減少する見通しで、不健康な場合、低学歴の男性は生涯賃金が33%減るのに対し、高学歴の男性は17%の減少にとどまるという。

年金状況をみると、低所得者の方が高所得者よりも寿命が短くなる傾向があり、年金額は更に減少する見込み。また退職年齢の引き上げは、年金全体において低所得者と高所得者との不平等を拡大する傾向があり、全体への影響は小さいものの、高齢者の男女不平等はかなり残る可能性があると指摘している。年間年金支給額(OECD平均)をみると、女性の方が27%少なく、同報告書は「高齢者の貧困は、男性よりも女性の方がリスクがはるかに高くなる」と分析している。