「データバックアップのVeritas」から「データ管理のVeritas」へ――Veritas Technologiesが掲げるこの新戦略を現場で実行するにあたって責任を負うのがフィールドオペレーション担当エグゼクティブバイスプレジデントのScott Genereux氏だ。同氏に、今年9月、同社が米ラスベガスで開催した自社イベント「Veritas Vision 2017」で現場での取り組みについて話を聞いた。

Veritas Technologies フィールドオペレーション担当エグゼクティブバイスプレジデント Scott Genereux氏

Genereux氏は今年2月に同社に入社、直近ではOracleに勤務していた。「業界のロックスター」であるBill Coleman氏(CEO)に惹かれ、また、Mike Palmer氏(最高製品責任者)のビジョンを聞いてVeritasへの入社を決意したという。

--CEOのBill Coleman氏は顧客最優先の姿勢を見せている。これまでVeritasは顧客と話をしていなかったと認めているが、フィールド担当としてどうやって顧客最優先の姿勢を社内に浸透させているのか?--

Genereux氏: CIOは「顧客はVeritasとVeritasの製品が好きだと言ってくれたが、われわれの戦略を理解しているとは言えなかった。今のVeritasはこれができるというと、もっと話を聞きたいと関心を持ってくれる」と話している。顧客はデータマイグレーション、マルチクラウド環境での情報管理、新しい規制への対応などの課題を抱えており、Veritasはすべて解決できる。

企業が変化しようとする時、営業と技術スタッフの教育とトレーニングはとても重要だ。最初にやったことは営業のトレーニングだ。これまでのように製品ベースではなく、顧客の問題をどうやって解決するかという視点でVeritasの製品を紹介するように考え方を変えてもらうということだ。こうしたトレーニングを積極的に世界中で展開している。営業を拡大してくれるパートナーに対しても同じメッセージを伝えている。

提案する製品も、これまでのバックアップから、データ管理のソリューションセットとなる「360度データ管理」にフォーカスした。

「360度データ管理」は今年5月に提供を開始しており、360度データ管理が市場に登場して最初の四半期の段階で売上の10%を占めている。既に成果が出ており、パイプラインも好調だ。確実に変化が見られる。

営業担当にとって、「自社製品がCIOにとって重要な製品」「CIOが抱える問題を解決できる製品」であることは最高の状況と言える。新たなVeritasには素晴らしいソリューションがあるため、営業担当はすぐに新しいアプローチが正しいことに合意してくれた。

技術スタッフに対しては、深いレベルのトレーニングをしている。製品トップのMike(最高製品責任者のMike Palmer氏)の組織とエンジニアリングの視点で協業しており、これもモチベーションの改善につながっている。

--顧客の問題は常に変化している。今の課題、将来の課題を早期に把握するために行っていることは?--

Genereux氏: 顧客とたくさんの時間を費やすことだ。

トレンドだと思い投資したが、その通りにならないこともある。われわれはデータ保護市場のリーダーであり、リーダーの位置だからどうすべきかがわかるところがある。マルチクラウド戦略がそれを示すいい例だ。

顧客のデータセンターだけではなく、複数のクラウドを利用するという視点で、それを可能にする機能やサービスを通じて顧客を支援できる。顧客は複数のクラウドベンダーを利用しているが、それと同時にデータがどこにあるのかを把握し、規制に遵守しなければならない。360度データ管理はシンプルにそれを実現できる。

--欧州連合(EU)のGDPR(「一般データ保護規制」)に対し、企業はどのように取り組んでいるか?--

Genereux氏 銀行など一部の顧客は、GDPRの専任チームを立ち上げて遵守への取り組みを進めているが、多くの企業はまだ否定している。これからの6カ月で企業の意識がどう変化するのかわからないが、GDPRは現実のものであり、遵守しないと罰金が生じる。

--GDPR取り組みにおける、Veritasの強みは何か?--

Genereux氏: われわれの強みは、GDPRにトータルで対応できる点だ。GDPRにおいてはデータがどこにあるのかを把握しなければならない。また、ドイツなど、国によっては国内にデータを保管しなければならない。

Veritasの「Information Map」はデータがどこにあるのか、どのように動いているのか、いつからあるのかなどを視覚的に把握できる可視化ツールだ。ここまでは他社もポイントソリューションとして同等の機能を提供しているが、Veritasはさらに、個人情報の所有者がレポートを要求した際、削除要請をした際にも対応できる。削除要請があると、企業は削除したことを証明しなければならない。プロセスすべてをサポートできるのはVeritasだけだ。

今回、リスクを分析できるツールを無償で提供することを発表した。これを利用して、自社がどの程度の個人情報を持っているのかなどを把握できるレポートを作成できる。Veritasにはプロフェッショナルサポート組織があり、クイックアセスメントとして評価し、さまざまな機能やサービスから必要なものを提供できる。

また、われわれのデータバックアップ製品「NetBackup」は大企業の多くが導入しているが、データの多くがコアのデータベースにあり、NetBackupはGDPRの遵守において重要な役目を担っている。

--日本ではチャネルが重要な役割を果たす。新しいVeritasとなってから、日本市場向けのチャネル戦略は変わったのか?--

Genereux氏: 日本ではチャネル販売が全体の85%を占めており、チャネル非常に重要だ。日本では3種類のチャネルがある。日本での販売は、伝統的なチャネル、日立や富士通などわれわれの製品を再販するOEM、再販事業者の3者のどれかを経由している。先に述べたようなトレーニングを日本のパートナーにも積極的に展開しており、360度データ管理を提供するようインセンティブも設けている。

これに加え、クラウドベンダーの存在も重要になっている。VeritasとMicrosoft、VeritasとAWS、VeritasとIBMという組み合わせはチャネルパートナーにとって大きなチャンスとなっている。

新しいVeritasに対するパートナーの反応は良いと理解している。パートナーはどこもクラウドへ向けた変化を感じており、このトレンドからどうやって収益を得るかを考えている。われわれはパートナーにマルチクラウドなど新しい製品やサービスをもたらし、パートナーはこれを持って自社顧客のところに行くことができる。

これまでVeritasからはバックアップだけだったが、データ管理全体のソリューションがそろうことで、パートナーは新しい収益源のチャンスを得ることができる。バックアップ以外の話が顧客とできるようになり、この変化をポジティブに受け取ってもらっている。